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【ドラマ】名探偵ポワロ『ハロウィーン・パーティー』-全体的にイメージが違う

『ハロウィーン・パーティー』

な~んて美しい庭!あれがドレイク家個人の物とは!しかし原作の、石切り場を自然そのもののように綿密に計算し造り変えた、ニンフや半獣のいそうな美しい隠し庭園というのとはだいぶイメージが違いますね。どちらかというと、その対比として示されていたベルサイユ宮殿系の幾何学的庭園に似ているような。

原作と大筋は変わっていませんが、こまごまとした設定・イメージが変っています。そういえば原作読んで想像していたのより、リンゴが小さかった。すっかり日本のリンゴで想像していたけれど、そうねあの大きさじゃ咥えるのは無理だものね、リンゴ一つとっても国によって違うのが面白い。私はハロウィン当日には海外にいたことがなかったので、頭の中のハロウィンのイメージが近年の日本のどんちゃん騒ぎのせいかかぼちゃ飾って仮装してウェーイ♪なノリになりつつありましたが、外国ではあんな風におどろおどろしいホラーっちくな感じでお祝い(?)するんでしょうかね?そうそう、原作は童話のようなちょっと幻想的な雰囲気でしたが、こちらはどちらかというとこれはホラーか?!と思うような重苦しさ。

あらすじは原作感想時↓に書いたのでこちらでは割愛します。リンゴだけでなくて、登場人物・舞台と全体的に原作イメージと違います。イケメン設定だった造園師マイケルは、イケメンといえなくもないけど、なんかしゃきっと立たんかい!と思わず蹴りを入れたくなるようなクネッとした、ジョニー・デップ溺れさせた(『パイレーツ・オブ・カリビアン』じゃなくて『チャーリーとチョコレート工場』の方のジョニデね)みたいなヘロヘロの髪のへらへらした男で。…そういえば前に『ナイルに死す』のなよなよした男ティムを、ジョニデとスネ夫足して3回殴ったみたいなとか言ったような記憶がある。ダメ男の例えにジョニデが出てきてしまうのはなぜなんでしょうね、ジョニデ好きなのに。しかしジョニデのせいかあの庭のせいか、どことなく不思議の国のアリス的な雰囲気もあり。最後の方の夜の庭のシーンは、あかずきんちゃんなミランダと相まってファンタジー感倍増。


アリスとチェシャ猫 フラワートピアリー(ふしぎの国のアリス)icon

ドラマではなぜかスペンス警部は登場せず、スペンス警部の役割は土地のちょっと意地悪な警察官とグッドボディ夫人に受け継がれていました。グッドボディ夫人は、原作だとハロウィンパーティには運命の相手をみる占い師という大事な役割で呼ばれており、古い土地に一人はいる恐れながら頼られる何でもわかる魔女のような存在の女性。しかしドラマではなんと勝手にパーティに乱入して来たただの迷惑おばあちゃんにw ”はいはいこっちに来ましょうね” ”いやだ~子供たちといっしょにいるんだ~” でささっと退場させられていたのには笑ってしまったわ。この扱いの差w

⇒原作感想はこちら:【本】『ハロウィーン・パーティ 』(アガサ・クリスティ/ポアロ)
アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタバレあり

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スペンス警部が削られたぐらいで、あとは登場人物は増えています。原作に全く登場しなかった牧師さんが追加され、そして何と言ってもロウィーナ・ドレイクが2人の子持ちに!しかもあんなに大きい。過去の殺人が早めにスマイス夫人殺しに絞られるので、殺して利益を得る人たちを増やして容疑者を増やそうとしたのかな?長編だと時間の関係で登場人物が削られることは多々ありますが、増やすのは珍しい気がする。

ロウィーナはかなり原作とイメージが違いました。有能なPTA的煙たがられ女性という設定でありながらも、背の高い四十過ぎの金髪美人でドラマよりも”女”の部分が残っているイメージ、旦那さんに先立たれて子供もいない。特に描かれてはいませんがなんとなくマイケルが金目当てなのも承知の上で、私が操縦してやろうぐらいの押しつけがましい有能感があり。原作の方にも書きましたが、人妻で子どもがいなく夫はポリオで重い身体障害を負う。そこに義理の母が雇った美男子のマイケル・ガーフィールドが現れ、のめり込んでいく。情熱としたたかさと冷静さをあわせもったロウィーナは、あまり内面は描かれないものの想像すると身近にいそうな、不快な怖さのある人物でした。でもドラマだと犯罪の黒幕は庭師、ロウィーナはなんかすっかりナルシストな男に騙されたかわいそうな中年女性という感じになってしまい。

ロフトネットストアそしてマイケルもマイケルで、イケメン度の低さと言動の子どもっぽさ、そして庭園の幻想度が足りなかったせいで、ギリシャの無人島に理想の自然の美の庭をつくりたい、という狂気に似た夢もなんかただの変態野郎の戯言っぽくなってしまっており。小川のほとりで座るミランダを、忘れないようにと繊細なタッチの絵に収めていたり、願い事の泉の話をきかせたりしていた2人の絆みたいのがほとんど描かれず。

原作では、マイケル・ガーフィールドは彫刻のような美男子で、ジュディスは今にも湖から上がって来たような美しい水の妖精、そして2人の美男美女の娘ミランダはあの庭に住む妖精のような美少女、という、それにロウィーナも合わせてこれまたポアロ物史上最も美男美女が登場した作品ではあるまいかという作品だったので、なんとなくこのドラマの全体的なイメージのずれは残念な部分があります。


プリザーブド&アーティフィシャルアレンジメント「フレフルール(ティンカー・ベル)」icon

他にも、マイケルはオルガと二股していたとか、ジョイスの兄は原作ではジョイスの弟(何歳でゆすりしたんだ?!)だったり、ミランダが見たのは死体を運ぶ2人、ロウィーナとマイケルだったとかこまごまと変わっている点がありますが、印象的なのはラストの部分。

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原作ではミランダは母親と共にロンドンに身を隠す途中にマイケルと落ち合って逃げだし、古代の宗教的礼拝の跡地であった巨石のところで夕日が沈むのを見ながらいけにえの儀式を行おうとします。そこでポアロが付けていた見張りの少年2人組に阻止され、マイケルはミランダに飲ませるはずだった毒を飲んで自殺します。このシーンは原作の方が綺麗ですね。なので原作ミランダは、嘘だと言って~からの「みっともないおばさん、綺麗なものが好きなんだ」のクズ過ぎる問答シーンは見なくて済みます。多分原作ミランダは最後までマイケルを好きだったけれども、ドラマ版ミランダはあの後いろいろトラウマになっていそうですね…。そういえば、ポアロさんが力技で直接犯人を止めたのは初めて?ステッキでポコンしてました。ポワロさんのステッキは、双眼鏡になったり椅子になったり凶器になったり、いろいろ便利ですね。

原作でははっきりさせていなかった旦那さんとスマイス夫人の死因についても、ロウィーナとマイケルが殺したことになっています。おかげで二人が殺した人数がすごいことに。旦那、スマイス夫人、レズリー・フェリア、オルガ、ジョイス、レオポルドの6人。もしかしてドラマでは最多か?しかもそのうち2人が子供。ドラマ版名探偵ポワロ史上最悪の犯人といっても過言ではないのでしょうか。


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ドラマについてはいろいろ思うところはありますが、原作ですごく気になった ”ジョイスは人殺しについて何も知らないため彼女が言ってる人殺しがオルガ殺しとわかるようなことは喋ってはいない、だからすぐに殺さなければならないほど追い詰められてはいない”という点は、ドラマではちゃんと補足されて、ジョイスがかなり知っていて「数年前この庭で起こった殺人」というところまではっきり言っていました。これは良かったと思う。やっぱり原作のだとちょっと、事件の発端から納得できない感じになってしまうので。

なお今作で出てくる教師との同性愛ですが、ドラマでの改変によるものではなくて原作にもあります。ちなみにお色気シーンに関しては、前も書いたけど原作ではハロウィーンパーティでもその他の長編でも若物がところかわまずブッチュブッチュやっているのはしょっちゅう出てくるし、死者の過ちなんかでも好色じじいのお楽しみ場面が描かれるわ、ミス・マープルシリーズの『カリブ海の秘密』かなんかでは長々とミス・マープツが考察していたりとそれなりにあるので、シリーズ後半でお色気シーンが増えていることをもって改変・改悪だというのは違和感があり。家族で見づらいのでお色気シーンは無いほうが良いという意見には私も非常に賛成ですが。あとシリーズ後半の陰鬱さも原作通りよね。原作の初期や短編に多い、ラノベのような頭の軽い恋愛・スパイものと、どちらかというと後期の長編に多い後味悪い系、どちらも原作クリスティの味で。むしろほのぼの一辺倒だったドラマ前半シリーズのノリで長編ドラマをやられたら、そっちのほうがよっぽど原作からかけはなれているわ。あのノリも好きだけれども。

『ハロウィーン・パーティー』に関しては、原作を知らなければ、これはこれでいいかな、というドラマ。原作も話自体はさほど良いというわけではなく雰囲気頼みの所がありますが。でもやっぱり、子供が実際に犠牲になるシーンは映像で見るとさらに嫌ですね。

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