旅行鞄にクリスティ

海外旅行とアガサ・クリスティのブログ 最近はコスメ・ファッション・マイリトルボックスレビューに侵食されぎみ


【本】『複数の時計』(アガサ・クリスティ/ポアロ)―とりあえずふぉーりんらぶしておけば良い、という考え方

『複数の時計』☆★★★★

すごく久々に再読しました。これはポアロ物の中ではかなり遅くなってから読んだ本の上に、すんごいつまらなかった、という印象だけが残っているため、多分2回ぐらいしか読んでいない。おそらく持っているアガサクリスティの中で一番読み返した回数が少ない本がこれ。

ビッグ4 』程の悪い意味でのインパクトもないので、「今読み返せば違う感想かも?!」みたいなつまらないからこそあえて挑む気にすらもならず。ぼんやりと犯人だけは覚えているような気もするもののほぼ筋を覚えてもいないので、とりあえず先入観を取っ払ってまっさらな気持ちで読もう、と再読。なお、作中に出てくる「ペキニーズの事件」は、『ヘラクレスの冒険』に出てくる短編「ネメアのライオン」のことです。



まずはあらすじはwikiより引用―

速記タイピストのシェイラは、仕事でクレスント通り19号の家に向かった。彼女が指示された部屋に入ると、そこは無数に時計が置いてある妙な部屋だった。そして、彼女はそこで男の死体を見つける。さらに、死体を囲んでいた時計は、その家の住人の持ち物ではなかった。

あれ、意外と面白い…?無人の依頼者宅、そして時計の多すぎる居間。いつも通りの日常の流れている平穏な住宅街で、そこだけわずかに何かがずれてしまったような奇妙な部屋に入り込んでしまった静かな緊張感を破るように突然鳴き出した鳩時計、思わず怯えた自分に笑った瞬間に見つけた、血まみれの死体。そこに目線の不自然な女性が入って―彼女は盲目なのだ。「いけません―そちらに行っては…踏んづけますよ―その人を…死人なのです」

死体踏んづけますよ―このセリフがまず素晴らしいよね。事の重大さに対して言葉の響きが間抜けというかシュールというか。自分ちに知らない人が入って来てる恐怖や死体があるという異様さよりも、そのインパクトの方が優ってしまうぐらい。「あ、私、死体踏んづけるんだ」みたいな。でもシェイラの立場だったら確かにその他に言いようがないですね。そんでそんなシュールなこと言うだけ言った後は、悲鳴あげながら家から出ていっちゃう。ミス・ペブマーシュも思わずポカン。でもこれも自分でもそうするだろうな~とにかく走るよね、きっと。すごくありえそうなのに、何かがちょっと歪んでしまったようなシュールな恐怖が面白い。冒頭の雰囲気作りはもうバッチリです。いや、本当の冒頭は、カヴェンディッシュ引き受け所で秘書がタイプライターでピンク小説を打っているところだけれども、それはおいておいて。

時計の中に一つ、「ローズマリー」という名前が彫ってあるというのもゾクっとさせます。だってなんか『ローズマリーの赤ちゃん』思い出すもの!もちろん「ローズマリーの赤ちゃん」は見たことないけどね!そんな感じで、ちょっとホラーのような異様な雰囲気を漂わせて始まる本作、その後すぐちょーほーいんらしきものが出てきてしまい、”クリスティのスパイもの、陰謀やら暗号やらやたら凝ってる文書の受け渡しやらが出てきちゃう(こっぱずかしい)話は例外なく外れである” というのが私の中の定説だったので、いろいろと嫌な予感の立ち昇る場面は所々あったもの、これは意外と面白いんじゃ―

アガサ・クリスティ 作品・感想一覧はこちら

以下ネタバレあり、『エッジウェア卿の死 』に関するネタバレも含む

砂時計


前言撤回です。ないわーこれ。いろいろなことが起こるけど全くついていけないまま、なんか結局全部はぁそうですかと言った感じで置いてきぼりのまま終わったわ。そこらへんサクッと取っ払って、”最近元気ないポアロ爺さんのところにコリン少年が事件という名のお薬を届けに来た” 的などこぞのミス・マープル的短編にしても十分なぐらいの内容の薄さだわ。

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特にタイトルにもしている「複数の時計」の扱いが酷い。前に秘書してた作家の未発表作プロットに似せて、しかも事件を難しく見せるためだけに取りあえず意味なく置いただけ。しょっぱなから雰囲気を盛り上げたあのローズマリーの時計も、たまたまシェイラが持ってたら盗んで置いてみたよ☆ したらそこがたまたまシェイラの生き別れの母の家だったよ☆彡

…複数の時計、題名にもなってるのにたいした意味がないってこと?そんなの詐欺だわ!○○殺人事件で、○○は実は持病の癪で死んだというオチだったぐらいの騙された感。いや、でもクリスティ作品はこれまでもそりゃないだろうという人が犯人だったり、びっくりなトリックで読者を裏切って傑作を書いてきたから、今作もきっとその一つなんだわ…「あ、その時計特に意味ないです」となった時の驚きね、確かに死体踏んづけますよ以上のインパクトが―

そんなん納得できるか。ミステリーの醍醐味はこんな何の変哲もなく見えた記述の裏にこんな意図がという驚きであって、その逆は求めていないんだ。いや、でも私がこの作品に付いていけないだけで、読者の裏をかく斬新な話と― いやそういえば以前そんな感じのネタ、『エッジウェア卿の死 』で既にやっていたよね?

あっちは犯人がおバカキャラというのが端々で出てたから、「ぼくのかんがえるさいきょーのはんざい」的な感じで持ち物に適当にイニシャル彫っちゃったりしても、ハハハいたずらっ子だなこいつぅ~☆みたいな感じで割とすんなり納得できた。あっちはいかにもやりそうな犯人で、またその人物像も魅力的(といっていいのか)なのでとても好きな話。その上この「つい付け足しちゃった☆」的な部分は、犯行の中でそこまで重要な部分を占めてはいないし。一方こっちの犯人といえば、一応まがりなりにも経営者だよね?しかも文学的で知的な素養もある頭の良さそうな女性。それなのに ”あの本に書いてあったしとりあえず時計置いておこう、あ、シェイラが時計持ってる、これも置いておこう” ってやった、特に何も考えてはいない、で済ませるなんて!こんなに期待させておいてそんな!騙したわね!

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しかもミス・ペブマーシュがシェイラの母親って、そんな必要あり?マーティンデールとミセス・ブランドが実は姉妹、そしてミス・ペブマーシュとシェイラが実は母娘、作中に2つも実は…な血縁関係があり。しかも後者の母娘という血縁関係に関しては、事件に全く関係なかったし。犯人は別に母親が誰も知らずたまたまミス・ペブマーシュの家に死体おいて、たまたま事件に巻き込もうとしたスケープゴートがその生き別れの娘だったの?しかもたまたまポアロが未発表作品競り落としてて犯行の類似点に気が付いて事件解決とか。

偶然が多すぎることに怒るべきか、いろいろ意味なかったことに怒るべきか、もうどっちも酷くて私のいたいけな心をもてあそばれたという感想しか出てきません。信じてたのに!しかもポアロ全然出てこないし。そんで娘が悲鳴あげて倒れ込んだ相手が、これまたたまたま家の近くまで来てミス・ペブマーシュを調査していたちょーほーいんで、ついでに二人はふぉーりんらぶ 完

Instagram:mugi_mugi333
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