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【本】『そして誰もいなくなった』…ってつい呟きたくなるよね?(アガサ・クリスティ著)

『そして誰もいなくなった』✩✩✩✩✩

久々にポアロ物以外の本の感想を…、といいながら相変わらずのクリスティ作品です。来週2夜連続で仲間由紀恵主演のドラマが放送されるので、それに合わせて原作を再読。海外物が日本でドラマ化されるとイメージが違ってガッカリすることが多いのですが(特に思い入れの大きい話は)、この話はそんな思い入れ無いので結構楽しみにしています。仲間由紀恵でミステリーとなると、つい全部全てまるっとお見通ししてくれそうな感じもしますがwそういうノリではなくちゃんと殺されてしまうようですね?

とりあえずあらすじをザックリと―

とある人物によって買い取られたという噂の立ったイギリス、デヴォン州にあるインディアン島に、8月のある日、10人の男女が集まってきた。U・N・オーエンを名乗る者から招待をうけた、判事、家庭教師、医師、遊び好きの青年と職業も年齢もバラバラのお互い面識もない10人の男女。しかしU・N・オーエンは姿を現さず。屋敷の各客室にはインディアンの数え歌が飾られ、食堂のテーブルの真ん中には10個のインディアンの陶器の人形が置かれていた。

主不在のまま供された夕食の後、寛ぐ応接間に突如10名の犯した「殺人」を告発する声<声>が響きわたる。一同は憤り翌朝島を出ることを決定するがその直後青年が突然死亡し、翌朝召使の女性も死亡しているのが見つかる。そして10個あったインディアンの人形はいつの間にか2つ減って8つに。8人は迎えのモーターボートはもう来ないことを悟る。


✩5つ付けておきながら思い入れがないとはどういうことだという感じですが、正直この話✩3つにするか✩5つにするか悩みました。というのも、この話苦手なのです。好きな話じゃない、でもこんだけ有名な話を✩3つはないだろう…という思いもあり。私の☆の付け方に関しては傑作とかミステリー史上とかどうでもよくて面白かったかどうかの全くの個人的な尺度なので、有名も何も関係ないのですが。しかし嫌だな~と思いながらも、アガサ・クリスティの他の話読みながら思い出したり何かにつけて話題にしたりと、他の話以上に読んだ後に強い印象は残ってはいる。何が嫌って、とにかくこの話怖いんだもの。ホラー系の怖さなら覚悟して読むからまだいいのですが、推理小説でこんな怖いなんて反則だわ。孤島に閉じ込められた被害者たちの中に、一匹紛れこんだ殺人者がいる。誰だかわからないそいつが子守歌に合わせて、一人ずつ殺していく。読んでいて「ダメだよ、ダメだよ部屋から出ちゃ…」と思う場面で性懲りもなく飛び出していっては一人また一人と殺されていくわけです。そのシチュエーション自体も怖いし、10人の疑心暗鬼の精神状態も心臓に悪いし、10人それぞれの過去も合わせてジトッとした嫌なものがまとわりついてくる雰囲気がもうもう怖いんだってば!ほんとワクワクしちゃうよね!

以下ネタバレあり。

アガサ・クリスティ 作品・感想一覧はこちら
⇒映画版感想はこちら:【映画】『そして誰もいなくなった』―のか?(アガサ・クリスティ原作)

以下ネタバレあり

シャンティイ


島に集められて殺されていくのは、過去に罪に問えない「殺人」を犯した人物達。溺死させようとして沖へと唆した、死地へ送り込んだ、酔って手術をした、自殺へ追い込んだ等、殺意があったり重大な判断ミスがあったけれど法的には殺人罪には問えない・立証できない「殺人犯」たちを、U・N・オーエンはその罪の大きさに合わせた恐怖を味合わせながらこの島で裁いていくわけです。しかもそれは正義の裁きを下したいというだけでなくて、人を殺したい、それも前例のない非凡な殺人がしたい、という欲望からそういう被害者たちを選んでいるわけで、犯人も被害者も登場人物で善人が一人もいないし、共感できる人もいない。

アガサ・クリスティの作品だと、犯人や容疑者が善人ではなく欲望に弱いいわゆる「普通」の人達でそこが共感できたりするのですが、この話に関してはちょっと一線を越えてから白々しくずっと生きながらえてきた人たちが登場人物たちなので、読んでいて気分が悪い。ただ別に根っからの悪人でも殺人狂でもなく、そんな境遇に置かれたらもしかしたら自分もふらっと欲望に負けてやってしまうかも、もしくは運悪く(と言ってはいけませんが)事故を起こしてしまうかもといった人の死なせ方でもあり。なので他の作品の共感できる犯人達も、捕まらなければ『そして誰もいなくなった』の登場人物のように自分を正当化して、見なかったふり忘れたふりで誤魔化して日々の生活を送っていたんだろうし、『そして誰もいなくなった』の登場人物がとびぬけて胸糞悪いというわけでもないのでしょう。そのズルさがいかにも普通の人らしい弱さだなとは思いながらも、そこにずっとスポットライトを浴びせた話はやっぱり読んでいてきついというか。なんとなく、見たくない部分、見せられたくない部分を見せつけられるような感じがあります。同族嫌悪に近いのかも。

一人一人の心理に関してはそんなに掘り下げられないものの読んでいて始終うっすら嫌~な感触が絡みついてくる話なので、あまり何度も読み返したくはないのですが、でもやっぱりクリスティの代表作と言ったらこの話だよね。まず題名がズルいよね。『そして誰もいなくなった』ですよ。何このシリアス感。人がいなくなるシチュエーションがあったら、とりあえず「そして誰もいなくなった…」とか呟いとこうかと思ってしまうぐらいの、無駄なかっこよさがあるもんね、話の内容全然知らない人でも! 原題は「 And Then There Were None」らしいですが、この原題よりも邦題の方が恰好良いというかゴロが良い気がする。いや、ネイティブの人が聴いたら原題もゴロが良いのかもしれないけど。
 

罪に問えない犯人を裁くという犯行の性質から勘のいい人ならわかるのかもしれませんが、真犯人は中盤に死んだはずの判事です。「死んだふりをして犯人を動揺させる」と言って医師を騙して2人で共謀して死んだふりに成功、その後は誰にも見張られずに自由に動き回って片っ端から殺すお膳立てをしていくわけですが、最後は犯人が殺すんじゃなくて残ったもの同士で殺し合いをさせ、最後の一人を自殺させた筋書きがすごいよね。 ”最後に生き残る者が犯人だ。さあラスト2人、どっちだ?あ、ヴェラが撃ち殺したからヴェラが犯人か…!と思ったら首吊って死んじゃった?!え、本当に誰もいなくなっちゃった…?!” みたいな。初めて読んだ時はそりゃもう驚きましたとも。

全員殺すという判事の目的だけなら最後自殺じゃなくても判事自ら手を下せば良いわけですが、小説としては最後犯人すらいなくなっちゃった…!みたいなこの筋書きの方が何倍も美味しいわけで。クリスティほんとズルいわ、ほんとしてやられたわ~。ラストのヴェラの自殺に関しては、ロープがプラーンとなっているのを見ただけでふらふらと首突っ込んで自殺したりするかな、とも思わなくもないですが、たった今ロンバートを撃ち殺してきたところで、これまでの死闘、沢山の死体、そしてここから出て日常に戻るにはこの悪夢のような出来事、下手したらシリルの死についても一人で説明しなくてはならず。これまでのシリル殺しとそれによる愛する人の拒絶で既に疲れていた心には、そんな現実と闘う気力もなく。自分にとって良い策ではなく、例え悪かろうと楽な方を選んでしまう心は理解できる気もする。

死亡確認時に医者が協力しようと死体運ぶときに絶対生きているのバレるだろう、とか、不倫してさらに子供まで作って仕事首にされて自殺したのを、首にした人が殺したようなもんだというのはさすがにお門違い過ぎるだろうとかいろいろ言いたいことはありますが、まぁそんなのどうでもいいね。だってこの話何だかんだ言ってやっぱり面白いんだもの。好きじゃないけど、読み始めたら一気読み。そんで読み終えてうわ~読まなきゃよかった、みたいな。また10年ぐらい読み返さないと思うけど、やっぱりこれは✩5つか。ドラマも楽しみです。

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