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【本】『忘られぬ死』(アガサ・クリスティ著) ―面白いけど他作品の寄せ集め感が…

『忘られぬ死』☆☆☆★★

☆4つか3つでとても悩んだうえで、☆3つにしました。ポアロ、ミス・マープル以外のアガサ・クリスティ作品はそんなに読み返していない為、筋もいつ読んだのか、この本持っているのすらもすっかり忘れており。多分かなり前に読んだのだと思いますが、もしアガサ・クリスティの他の作品をあまり読んでいないころに読んでいて、その頃の感想を覚えていたら☆4つ付けていたかも。この長編は、『黄色いアイリス』に収録されたポアロ物の短編「黄色いアイリス」を膨らませた話です。ただしこちらにはポアロは登場せず、「ひらいたトランプ」「ナイルに死す」に登場したレイス大佐が出てくるものの別に探偵役ではないようで、主要部分の謎解きは別の人が担当。

まずはあらすじをサッと―

1年前、美しく若い富豪のローズマリーの誕生日を祝ってパーティーが行われ、フロアショーが終わり明かりがつくとローズマリーが死んでいた。死因は青酸カリ。流感後の鬱状態からの自殺と処理されたが、半年後夫ジョージの元に、ローズマリーは殺されたという匿名の手紙が届く。彼女の死から1年、彼女の夫ジョージは何かをたくらみ当時と同じレストランで当時と同じ客を呼び、ローズマリーの妹アイリスの誕生日パーティーを開くが―


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以下ネタバレあり ※「黄色いアイリス」のネタバレもあり

POLA ホワイトショット


唐突なポーラのホワイトショットシリーズの写真は、ローズマリーっぽいのが映っているからです。ちなみに私はスキンケアはポーラ愛用です(⇒関連エントリー:【レビュー】POLA(ポーラ)ホワイトショット CX ―自分では気が付きにくいくすみに)。そんなことはさておき、右手前のチクチクした葉のハーブがローズマリーだったと思う。ちょっといろいろ似たハーブが混ざったブーケだったので正確な所はわかりませんが。ローズマリーは名前はよく聞くもののどんな花なのか知らなかったのでネットで調べてみたら(上の写真には写っていません)、シソ科で意外と小さくて可憐な花なんですね。話の内容から、もっと大輪の花だと思っていたわ。アイリスの方が華やかなのが、話の筋と比べると面白いですね。

さて、「黄色いアイリス」が頭にあったので、ジョージが死んだのでびっくりしました。あちらではジョージが犯人、動機は同じくアイリスの資産です。そして「黄色いアイリス」ではフワッとしか描かれなかったローズマリー像が、こちらでは重度の恋愛体質ですぐ男性のことで頭がいっぱいになってしまう頭の軽い感じの人物に。これはひどいイメージ崩壊…w なんとなく白昼の悪魔のアリーナにちょっと似てる気がする。美しくて最初は男性を虜にする魅力があるものの、あっという間に飽きられ重たがられ利用されてしまう女性。

雇い主に思いを寄せる有能な秘書とか、愛情・嫉妬深く心の中をひたすら押し隠し、夫や恋人には表面上は務めて冷静的な面のみ見せる頭の良く地味な女性、そして女性に疎かったため華やかな女性にあっさり心奪われた後にあっという間に飽きて後悔している自業自得な浮気夫など、もうクリスティの他の作品でよく見るような人たちが沢山というかそれのみで主要登場人物が構成されていて、それぞれの心の内のドロドロを楽しむ(?)話になっています。特にルースやアレクサンドラ等女性としての魅力が欠ける人として扱われがちなちょっと地味目の女性の嫉妬やプライドの描写は、クリスティの十八番ですね。

ローズマリーが、誕生日パーティの出席者の一人が思い出せずルースが「私です」と言った時に、「ごめんなさい忘れてたわ」と笑顔で答えるシーンなんかなかなかすごいです。この悪気のなさに本当にどうでもいい存在と思われているというのが現れていて、言われた方は酷く惨めですね。相手は愛する人の妻と言うだけで圧倒的な敗北状態の上に、美しく何一つ不自由ない華やかな女性、自分もそこそこ見栄えはするものの到底ローズマリーには叶わず、たんなる雇われの身として労働に従事。見た目だけの張りぼて女性に蔑ろにされた有能で地味な人物のプライドや怨念は、読んでいて怖くなりますね。こんな嫉妬、逆恨みを向けられたらたまらないという思いの一方で、コンプレックスを刺激する人間がこんな近くで欲しいものをことごとく手に入れ笑みを浮かべていたら…と考えた時に自分の中にも立ち昇ってくるモヤッとした暗い思考の存在もあり。

この辺の女性心理はとても読み応えがあるんですよ。いろんな人の立場で、それぞれに身につまされるというか。そいういうのがクリスティ作品の醍醐味であり、また逆をいうとよく出てくる典型的なパターンでもあります。プライドを踏みにじられた有能な人物が犯人というのは他の話でもよく登場するのでなんとなく彼女が犯人だろうなと想像がつくのと、殺人犯は魅力的な人物だというこれまでのクリスティ作品での主張、かつ関係ないのに何度も何度も話に登場しているヴィクターはあやしい、ということはあそこで乗り換えて2人が手を組んだか、というのは早々に想像がつき、それを踏まえて読んでいると叙述方法もそれを裏付けるような部分もあったりで最後まで犯人推理が揺らぐことなくそのままラストに。私は推理小説を読むときはほとんど犯人を推理せず、しても碌に当たったためしがないのですが、それでもこの話はあっという間に分かったので、これはミステリー部分を期待して読む人には評価が低いだろうな~。だたジョージが殺された理由は全然わかりませんでした。まさか人違いだったとは…。全くの偶然によってみな一個ずれた席に座ってしまって間違えて隣の人殺しちゃったとか、想像するとおかし味さえ感じてしまうのですが笑ってはいけない。

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そもそもが短編の焼き直しだし、主要な登場人物がお決まりの人物像というのに始まって、犯人が虐げられた有能な人というのは男性でも女性でも何度も出てくるし、愛憎入り混じる関係者達の回想から故人の人物像を浮き上がらせる描き方、秘書が共犯者が遠くにいたように見せかけアリバイ作りに協力する点、その他沢山の点で何かどこかで見たな~他の話に似てるな~といろんな他のクリスティ作品が頭の上にチラッチラ浮かぶのを払っては浮かび払っては浮かびしながら読み終えた感じです。あまりクリスティ作品を読む前に『忘られぬ死』を先に読んでいたら、この話をもっと純粋に楽しめたかも。でもいろんな点で、似ている他作品達の方が読み応えのある話になっているので、『忘られぬ死』は決してつまらなくはないのですが全体的にインパクトにかけます。

最後の終わり方は好きです。ローズマリーは頭が悪く男狂いで自分と恋愛のとこばかり考えて周りへの想像力や共感がとても欠けてはいるのですが、積極的に人を傷つける意志はないのですよね。その配慮のなさのせいで殺されたようなもんですが、一方で異性には愛情のみを求め、そして家族にはそれなりに愛情を持ち、愚かかもしれないけれど単なる悪女としては描かれていないのが良いです。現実的にはローズマリーはそばにはいてほしくない女性ではありますが。

しかし短編と同じくこちらでもローズマリーを殺した方法が明確には描かれず。ルースが「すでに2つの殺人の従犯」という記述があるので、ローズマリーの時もヴィクターがメインでなんかしたんですかね?推理部分はいろいろ消化不良感が残ります。

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