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ポアロ『ヘラクレスの冒険』(ヘラクレスの難業)―ポアロのかぼちゃへの思い、再び(アガサ・クリスティ著)


『ヘラクレスの冒険』☆☆☆★★

今週末(というか明日)15:30にNHKで再放送される名探偵ポワロの『ヘラクレスの難行』にそなえ、『ヘラクレスの冒険』を再読したのですが…あれ、私なんでこれが苦手だったんだ?以前のエントリー ”アガサ・クリスティと私” で、苦手な作品上位3作品を挙げていてこれを3位にしたのですが、なんでこれを挙げたのか自分でもよくわからん。

なんとなく荒唐無稽なイメージで読み返しもあまりしたくなく、これまで数回しか読んでいなかったのですが、今回読んだら、面白い、とは言えないまでも普通に読めました。短編集なので読みごたえはあまりなく、すごいトリックも、登場人物の心情に心を打たれたりとかもまったく無いけれど、ポアロの小物っぽい俗物的な面とかネタ的に楽しめるし、読んでいてちょっと笑っちゃうような小気味のよい面白さはありました。

名探偵ポワロでのドラマの出来がとても良かったので、それでかさ上げされた部分もあるかな?再読ついでに、以前書いたドラマ感想の方にも追記しました。
 ⇒ドラマ「名探偵ポワロ」版の『ヘラクレスの冒険』視聴感想はこちら
 ⇒アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

あらすじ
引退しかぼちゃの品種改良に精を出すことに決めたポアロは、、引退までの間に自らのクリスチャン・ネーム”ヘラクレス”の難行にかけた12の依頼を引き受けることを決意。都会的な服装に身を包み、堂々たる口ひげをたくわえ現代によみがえったヘラクレスは、ネメアのライオン、レルネーのヒドラ等、芸術的で神聖な、第一級の12の事件に挑む。


ハロウィン かぼちゃなんかギャグみたいなあらすじだけど、本当にこんな話。しょっぱなから飛ばしてます。かぼちゃの味わいについて、まるでワインの品評のように語り、遠い目をするポワロ。なにこれw これ、二次創作ではありませんよ、れっきとしたアガサ・クリスティ著の、公式の話です。『アクロイド殺し』で一度かぼちゃ栽培にイラッとし、隣家へかぼちゃを丸ごと放り投げるというウルトラC技をやったポアロ、まだあきらめられないようです。

さらに続く、ポアロのヘラクレスに関する考察が面白い。”ただの図体のでかい筋肉自慢で、ろくな知性もなく、犯罪癖もあるろくでなしだ!” だの、もりっとした筋肉の、棍棒を振り回す素っ裸の男、だのボロクソです。そんなん読んだ後は、ハヤカワ文庫の表紙の写真が目に入ったら笑ってしまう。元祖ヘラクレスに毒づいた後、鏡で自分の姿をとっくり眺めて、これが現代のヘラクレスだとご満悦のポアロも素敵。

そして引退を飾る第一級の事件を!と意気込むポアロに持ち込まれるのが、ペットのペキニーズ犬の行方不明事件w 畳みかけるような笑いどころの応酬です。可愛そうなポアロw しかしこれが不本意ながらポアロの目を引き、第一の事件、ネメアのライオンとなります。12全部の事件の内容を書くのは大変なので省略。以下自分のための覚書です。



1、ネメアのライオン:ペットのペキニーズ犬の行方不明事件
2、レルネーのヒドラ:妻毒殺の噂をたてられた夫
3、アルカディアの鹿:ロシア人のバレリーナのメイドの行方探し
4、エルマントスのイノシシ:スイス山中に孤立したホテルでの凶悪殺人犯探し
5、アウゲイアス王の大牛舎:前首相のスキャンダルのもみ消し
6、ステュムパロスの鳥:次官が殺人事件を餌にゆすられる話
7、クレタ島の雄牛:狂気の血が流れる家系の息子の婚約者からの依頼
8、ディオメーデスの馬:麻薬パーティの後始末
9、ヒッポリュテの帯:消えた女学生と絵画の盗難事件
10、ゲリュオンの牛たち:新興宗教へ潜入捜査
11、ヘスペリスたちのリンゴ:十年近く前に盗まれ行方が分からなくなった酒杯の捜索
12、ケルベロスの捕獲:ロサコフ伯爵夫人との再会と麻薬取引


これはパーカー・パイン物か?と思うような軽い感じのものもあって、なんとなくポアロ番外編といった印象。でもそれなりに面白いかな。1個の事件を解決した裏で、もう1つ最後にでっかいの解決しときました、みたいな仕掛けがある話もあり、短い話の中で結構謎解きが楽しめます。

謎解きで好きなのは4、エルマントスのイノシシ7、クレタ島の雄牛9、ヒッポリュテの帯、あたりで、印象的なのは11、ヘスペリスたちのリンゴ の最後らへんの会話全般です。4、エルマントスのイノシシ はドラマ版『ヘラクレスの難行』でメインのストーリーとして使われたから好印象なのかも。読みながらドラマの美しいホテルの映像が目にちらついて、うっとり。ドラマの印象で原作も好きになることは少なく、私にしては珍しい。

一方 2、レルネーのヒドラ は、クリスティーでよく出てくる村の噂で殺人の濡れ衣をかけられた人の話で、正直またかという感じで楽しめなかった。そう言ってしまうと、上で挙げた7、クレタ島の雄牛、9、ヒッポリュテの帯 も、読んでると他のクリスティの長編が思い浮かんでくるどっかで読んだような話ではあるのですが。

9、ヒッポリュテの帯 では、珍しく若い娘たちに囲まれてサイン攻めにされるポアロが見られる。中期ぐらいからのポアロ物のお約束、”私はエルキュール・ポアロです” ”…誰だこいつ?” ”けしからん!”の流れは無し。よかったね。

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全体的に軽い感じで、分厚い本ですがテンポよく読めます。苦手な作品3位からは抜け落ちたかな。かわりに上げるとすればなんだろ、『鳩のなかの猫』かな~他にもあったかな、どうかな。ちょっと思い浮かばん。

ヘラクレスの冒険』は思ってたほど不満はない作品でしたが1点、ジョージが助手と訳されているのが非常に遺憾である。しかも助手としたせいか、ジョージの口調がポアロにタメ語っぽい感じ。こんなのジョージじゃない~。この話、ジョージだけでなくポアロの口調も違和感あり。結構ポアロは訳によって喋り方とか違うんだよね…。ハヤカワだかどこだか忘れましたが、ポアロが自分のことを「俺」と言っていた訳があって、これは結構目玉が飛び出ました。訳って難しい。原作でどんな英語が使われているか全く知りませんが、ジョージは執事以外認めん、認めんぞ!

「あまりにも不幸だったため、幸福とはなんであるかを忘れてしまったんです。自分が不幸であることを知らないほど不幸なんですよ」 「ああ、お金持ちなんですのね…」
―エルキュール・ポアロ&修道院院長



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