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【ドラマ】ミス・マープル版『殺人は容易だ』 ―クリスティの後味悪い系の話に免疫があればなんとか

『殺人は容易だ』

ブログに書いていないだけで普通に毎週見ていますが、ブログでは久しぶりの海外ドラマ「ミス・マープル」シリーズ。今週は『殺人は容易だ』、原作ではバトル警視物だったのをドラマでミス・マープルものに改変したものなので、本来マープルさんは出てこない話のようですね。私は原作のミス・マープルものは全部原作読んでいますがその他のシリーズは半分ぐらいした読んでおらず、これも未読。

どうやら原作ファンには不評だったのかな。でも原作未読の私はそこそこ面白く見ました。いや、面白いというと語弊がありそうな。話としては…うわぁ~って感じですが、謎解き部分に関しては全編通して陰鬱な雰囲気に次から次へ起こる殺人、そして意外な犯人と飽きる間もなく。ミス・マープル役がジュリア・マッケンジーになってからの映像は、全体的に灰色がかってじめっとしたイギリスの田舎の雰囲気が出ていて、話もマクイーワンの時よりもシリアス目になっているような。今回もおどろおどろしく不気味な雰囲気が話によく合っていた。

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この話、登場人物が多めでなかなか名前が覚えられない。そして出てくる人出てくる人、どっかで見たことある顔だな~、と気になって何度も前に戻って見返したりしていたせいでなかなか進まずw まずルーク役はベネディクト・カンバーバッチ、シャーロックですね。そんでラビニア・ピンカートン役のシルヴィア・シムズは、ヒクソン版ミス・マープルの『予告殺人』でイースターブルック夫人役、エイミー・ギブス役のリンゼイ・マーシャルは名探偵ポワロ『ひらいたトランプ』でメレディス役を演じていた。ただなんかむっちゃ見たことあると思ったリディア・ホートンを演じたアンナ・チャンセラーは、調べた限り知っている作品はなかった。う~む。

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そしてオノリア・ウェインフリート役のシャーリー・ヘンダーソンは、ハリポタの嘆きのマートルでした!…えっ?マートル…?!年齢が、年齢が…。マートル死んでるから年が微妙だけど、あれって一応生前は学生で、10代半ばぐらいの役よね?今回のオノリアはオールドミス。特に年齢を言っていないけど、40代ぐらい?『ハリー・ポッターと秘密の部屋』が2002年、その6年後にこのミス・マープル4 『殺人は容易だ』…えぇっ???年どうなってるんだ…。

シャーリー・ヘンダーソンのwikiによると、

童顔と子供っぽい声のためか、『ダブリン上等!』の過去のトラウマにより髭を伸ばし続ける少女役や『ハリー・ポッター』シリーズでの嘆きのマートル役等、自分より年下の役者の妹や後輩役・実年齢よりも若い役として起用されることが多い。

いや、若すぎだろ…。1965年生まれだから、ハリポタ公開時は37歳前後…マートル…。
そんなことはさておき、とりあず、あらすじ。

相席になったミス・マープルに「村で起こった連続死は殺人である、これからロンドン警視庁に通報しに行く」と言い残し列車を降りた老婦人ラヴィニアは、その直後エスカレーターで転落死した。葬儀に参列し村に入り込んだマープルは、ラヴィニアが次の被害者と危惧していたハンブルビー医師が死亡したのを受けて、元刑事だというルークと共に調査を開始する。選挙を控えたこの村、夫が死んだというのに陽気なハンブルビー夫人、古文書の拓本を採りに来たというアメリカ人の女性、昔知的障害者の弟を川で亡くしたオールドミスのオノリア、最初の被害者の孫でセキの止まらないエイミー等、だれもかれも怪しげに見える住人達のなかから、また次の犠牲者があらわれる。


見ていてちょっと引っかかったのが、全体的にセリフが説明的なこと。葬儀の場でのいかにもな登場人物紹介といい、事件の手がかりに関するとこといい。みなさんめっちゃ不自然にセリフに織り交ぜてくる。1時間半のドラマでは時間がないんだろうな、とは思うけれども。エイミーのラヴィニアに関する説明の、ヘンリーおじさんとかドアのノックの話への振り方とか、いや、なんか説明ご苦労さまと言いたくなる感じで。複雑で多い登場人物といいこの手がかり系の説明といい、次から次へと情報をほいほいっと提供されている印象を受けるようなつくりの話です。なのでこっちも、珍しく絶対犯人見つけてやろうと意地になって謎解き直前の部分まで何度も見返したのですが、みごと当たらず。真犯人は何度もチラチラ頭をよぎったものの、情報の波に押し流されていきました。

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以下がっつりネタばれあり

弘前



なんかめっちゃ後味悪い、胸糞悪いラストです。結構衝撃。マートルだけは信じてたのに…!!一見可哀想な良い人そうな被害者風に見えますが結構キてる犯人でした。弟はまだわかりますが、思い込みと勘違いで保身のためにこんだけバタバタと、村人6人ですかね、殺人を犯して。ベッドの中でエイミーの断末魔を聞いているシーンとか、ホント怖気がしました。



過去の罪がバレそうになって自分の保身のためにバタバタと連続で殺す、しかも最初は別にバレてもいなく犯人の勘違いで本当は殺す必要がなかった、という設定は、ミス・マープルのある長編を思い出します(ネタバレなので題名は伏せる)。後ろ暗いことのある人は、何年たっても心から安心して暮らすことはできず、その怯えにより身を亡ぼすという話。しかしそちらの過去の罪は大金を手に入れるための誰も傷つかない嘘、こちらは最初から殺人。とある作品のほうはそれゆえに普通の人が保身と恐怖から連続殺人犯になっていく怖さがありますが、こっちの犯人は最初からかなり追いつめられているというか。

とにかくオノリアが怖い。自分の青春も何も犠牲にして知的障害者の弟の世話をして暮らし、罪によって解放されたものの、狭い村の中友人の夫となり政治家として成功したかつての恋人を見続けながら、身寄りもなく一人孤独に過ごす日々。一人で長い間罪を抱え守るうちに視野は狭窄し、”未開封のまま神の元に送り返される”と例えられた何の華やぎも楽しみもない禁欲的で孤独な人生の中で歪んでいったのでしょうか。

最初の弟の殺害は今も追悼をし愛情を感じさせる一方で、他人を殺すシーンはま~冷静にてきぱきと手際よく殺していきます。ラビニアに関しては、「口が災いした、死んでもらうしかなかった」と嘲るように笑いながら、一方でブリジットに本当に賢い子、とほのかに嬉しそうにいう落差が不気味。殺した他人に対しては全く後悔の色や懺悔の言葉は見せなかった冷酷な大量殺人鬼のみせる母性愛、そしてそれ以上の自己愛というか自己保身。

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最後繰り返し、「お願い、お願い」と懇願するのは、誰か一人でも自分の境遇を理解してもらいたかったんでしょうか。しかし誰一人顔をまともに見てくれる人はおらず。これだけ殺していおいて、「あなたを産んだ。素敵なアパートで、いい人生でしょう」とかつて川に流した子供にすがって自分を正当化しようとする姿は大分気味が悪い。

今回一番悲惨だったのは、アメリカからわざわざ産みの親を探しにきたブリジット。見つかった真実がこれじゃほんとショックだろうな。自分が詮索したせいで母親は連続殺人を犯したし、実の父親には知的障害があって性的なことを吹き込まれたためにおかしたレイプによってできた子ども、しかも近親相姦だったとか。なんか救いがないので、知らないほうが絶対幸せだったろうに。

犯人に同情する気はさらさら起きないですが、しかしレイプの件といい、みんなを集めたところでオノリアを吊し上げる必要があったのだろうか…。ここに関しては疑問です。この部分、ダメな人はダメだろうな~。ミス・マープルシリーズでやるなら、最後の種明かしはせめてブリジットのいないところでやって欲しかったわ。そうそう、気になったので調べたところ、イギリスで中絶が合法化したのは1967年、ドラマの舞台が1950年代なので、まだまだ中絶は罪の時代ですね。

判明した事実と犯人の異様さとこの吊し上げのせいで、非常に後味が悪く、見終わった後に嫌なものが残ります。謎解きが非常に気になり、最後までしっかり飽きずに見てそれなりに満足しましたが、繰り返し見たい話ではないですね。原作からかなり改変されているとは言え、この嫌な感じはとてもクリスティっぽいです。

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