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【本】小野不由美『残穢』―ホラーだけど怖くない。でも本から出てくる残穢が死ぬほど怖い!


本当はこれ、写経体験のエントリーの次の日にアップしかけたのですが、並んだサムネイルが我がブログながらあまりにアレだったので間をあけましたw 本の感想、またまた小野不由美で『残穢』です。2013年に第26回山本周五郎賞を受賞した作品です。本屋にコスメ雑誌目当てでふらっと寄ったところ、最近文庫化されたようで目につくところに置いてあったので、買いました。私は好きな作家でもハードカバーの本は買わず、文庫化までひたすら待つタイプです。寝転びながら読むので。この話、竹内結子主演で「残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―」として映画化され2016年1月30日より全国公開のようですね。

ざっくり書くと、ライトノベルのホラー作家が、読者からのファンレターで送ってもらった怖い話について調べて行く、という話。小野不由美の古い読者ならピンとくると思いますが、えっ?これ小野不由美の実話なの?と思うような設定になっています。その当時の裏話のようなエピソードもあり。といってもノンフィクションではないので、どこまで実話からもじっているのかはわかりません。ここに出てくるホラーシリーズは「悪霊シリーズ」のことですよね。笑ってしまったエピソードがこれ↓

チャンスがあったとき、おそろしく様になっていなかった「あとがき」は削ってもらった。


ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

あとがきが黒歴史になっとるw 確かに「悪霊シリーズ」、今の作風からは想像できないようなハイテンションでキャピッとしたあとがきが付いていたわ。「悪霊シリーズ」は一時期絶版で、今はリライトされて手に入るようになりましたが、あのあとがきは削られているのね…。あと、これも何かの本のあとがきだったと思いますが、「指先に湿疹ができて割れるという奇病に何年も悩まされている」というようなことが書かれていたのを覚えていますが、それに関するエピソードもあったり。なんかあの少女小説とそれを読んでいた頃の自分を懐かしく思い出すような話―

…とほのぼのできるのは一部で、『残穢』。これほんと感想書きたくない、題名すら書きたくない。だってなんかのろわれそうだもの!うつりそうだもの!これホラーです。でもはっきりいって怖くない。読み終わった時、えっ?!これで終わり?何にもないじゃん!と正直思いました。でも読み終わってからがなんか怖い。まずこの本をどうしようか悩んだよね、手元に置きたくないし!『残穢』とブログに書くのすら嫌だし!夜に感想なんか書けないし!だって怖いし!怖いの?怖くないの?どっちなの!

この話、ホラーの物語としての恐怖とか、手に汗握る展開とか、ひやっとする恐怖を求める人には肩すかしだと思う。ノンフィクション風に怪談と思われる話を調査して、わかったのがこれです風の淡々とした話です。でもノンフィクション風にこの怪談にかかわった人を追っていく話なので、最終的には読んでる自分の身を考えてしまうわけです。あれ、これ読んでる私はどうなるの…?と。なんというか、本を抜け出して来て実生活に影響する怖さwww ヤバいwww 早く本売りたいww これ、怖がりには結構きついです。怖いの平気な人は別に平気だと思うけれども、怖いの苦手な人は読むと後悔すると思うので、こっから後は読まないほうがいいです。


以下ネタバレあり

江戸東京たてもの園


この話、途中で判明することですが、「別の人物からきいた別の場所の怪談であるにもかかわらず、たどっていくと根は同じだった」という、存在自体が怪であり業の深い怪異がテーマになっています。「何か」に由来し、そこからツリーを描くかのように分岐し増殖していく穢れ。ホラー小説家のなかでも書くと触りがあるから書けない「封印された話」、四谷怪談のように、元の怪談がどういうものであれ、関わると祟られる、存在自体が祟る諸々の災厄の元凶。

まずは、あらすじ―
当時少女小説でホラーシリーズを持ち、読者から怪談話を募っていた「私」は、都内に住みライターをしている読者の久保さんから送られてきた怪談話に既視感を覚える。

新居の岡谷マンションの和室で物音がする。何かがひっそりと、畳の同じ場所をゆっくりと往復しているような、力なく箒で掃いているような―

数年前、同じマンションの別の部屋に住む読者から、ぶら下がって揺れているものが見えるという同じような怪談が送られてきていたのだ。久保さんとコンタクトをとり共に怪談を調べはじめたころ、久保さんは例の和室に晴れ着の帯のようなものを見る。しかし晴れ着用の高価な袋帯を、畳に付いてこすれるような干し方はしない。帯が畳にこすれて揺れている ― 帯締めを解いて背から床へ垂れた帯、そして解いた帯締めを輪にし、首を入れ、台を蹴る。暗がりの中、晴れ着姿の女が首を吊って揺れている―


これ、特に実話ともノンフィクションとも書いていませんが、読んでいると非常に実話っぽく感じるように書かれています。そこがミソ。でも最初は、ノンフィクション風に淡々と事実と反論を述べているので、なんかあんまり怖くないなと思っていた。でも、この揺れているものの正体が分かってくるところはゾクっとしました。

で、こっから本格ホラー展開か!と思うとそうでもない。このマンション近辺で妙な話が多発しているのでそれを何世代も遡って淡々と調べていくわけで、そうなると新旧とわずとにかく住人が多い。住人も多けりゃ怪談のバリエーションも多い。首吊りの女性だったり、赤ちゃんの泣き声だったり、床下をはうものだったり黒こげの死体の山だったりいろいろ混ざっていて、どれがどれやら。調べていくと、その地で本当に首吊った人もついに出て来るのですが、その恐怖をじっくり味わう間もなく次の調査へ、という感じで。読んでいて怖くない。

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)

…と思ったらですね。岡谷マンションでは契約更新をせず再度引っ越しして安心していた久保さんの新居で、また物音がしだす。それを心配する「私」の体調もおかしくなっていく。この穢れ、岡谷マンションに留まらずに伝染するんです。

後半の方でこの話を調べてくれた怪談に詳しい作家の平山氏は、こういう業の深い怪談、語ろうとするだけで変事があるようないわるゆヤバい話は「取扱い注意」だと何度か注意をしてくれるわけですが―手遅れじゃね?「私」はもうどっぷりつかっちゃってるよね?というかこの本書いている時点でヤバくね?というかこの本読んでる読者は?私はどうなるの?いや~!もう遅いし!バカバカ!とこの本を読んでしまったことを後悔するわけです。いやこれ唯の小説だし、ホントの話じゃないし…とわかってはいても、でもこれ思いっきり小野不由美の実体験っぽいし、出てくる作家も実在のモデルいそうだし!なんかこういうの本当にありそうだし!

ここから先は省略しますが、災厄の本体がわかって都内の岡谷マンションで起きていた怪異は、北部九州の奥山家の怪異から感染し派生していった怪談の側枝に過ぎなかったというのがわかるところがぞくっとしますね。物語は終了は、奥山家の怨念と対峙するわけでも無く、相変わらず岡谷マンション付近では細々と怪異は続いて相変わらず人は死んでいるようですが、取材をやめた「私」も久保さんもその後は怪異に悩まされることも無く。なので、え?こんだけ?そんでどうなるの?と。どうにもなりません。どうにもなりませんが、そこから怖い。だってこの話読んじゃったもの、聞くだけでも祟られる、存在自体がヤバい話知っちゃったもの、どうしてくれんの? もうね、フィクションだってわかっていても怖いもんは怖い、だってなんかとってもノンフィクションっぽい書き方なんだもの!

読み終わったのが夜だったので、結構泣きそうでした。あとがきにもあったけど、この本手元に置いておきたくない、ナニかが感染しそうだから!しかも私の部屋着物おいてあるしw 速攻感想書いてブックオフに売り払いに行きたいけど、夜にこの感想書きたくないし、いや、そもそも書いて大丈夫なの?平山さん、書くと障りがあるから書けない話って言ってたよね?!もうね、話は大して怖くないのに、本を抜け出して出てくる奥山家の『残穢』が怖くてしょうがないです。

最後の最後に登場する奥山家・真辺家のラスボス感がすごいよね。調査の先にたどり着いたのは、すべて終わった跡だった、というのがまた虚無感をあおります。夜逃げしても、きっとアレからは逃げられなかったんだろうな…。

この話、調査結果として出てくる登場人物が多くて読みながら今調査結果にでている人名がどこに出てきた人だか全是把握できずに読み進めていて、一回読んである程度人物覚えてから再読しよう、と思っていたのですが、怖いので再読はしません!感想も書き終わったし、もうこれは売りに行きます。怖くて持っていられるか!

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