旅行鞄にクリスティ

海外旅行とアガサ・クリスティのブログ 最近はマイリトルボックスレビュー・コスメ・ファッションに侵食されぎみ


【ドラマ】名探偵ポワロ『海上の悲劇』 ―殺人へと突き動かしたものは?

『海上の悲劇』
原作は『黄色いアイリス』収録の「船上の怪事件」です。

多才なヘイスティングズ、カーレースだけでなくクレーン射撃もできる。いろいろできるのに事件にはなぜかいつも役に立たない…と思っていたら今回はお手柄だったごめんなさい。ヘイスティングスの見せ場があると、おお!と思う心の隅でちょっと腹が立つのはなぜなんでしょうかwww こんなの私の(←)ヘイスティングズじゃない!みたいな。ポワロはドラマだと最初から、なんちゃら体操とかいう怪しげな船酔い予防はしなくて済む程度には船はそこまで苦手ではないようですね。そして ”便秘でもしてるみたいな顔” していた写真館にはどっちが誘ったのか、行く経緯を想像してみるのも楽しい。ドラマでは原作以上にレギュラー陣の仲睦まじさが見られますな。ヘイスティングズに残忍さとか無理な注文、と思ったら最終的にはいい感じになっていましたw

このドラマ、見ていてまず最初に驚いたのが、思ったのより全然船が小さかった。まさかフォーブス将軍がエッホエッホ走って10秒ほどで縦断できるほどの大きさだったとは。中はいろいろな設備があるようで、あの人数にこの大きさならすごく贅沢なつくりではあるのでしょうが、原作を読んだときは勝手にもっと広々として乗客も多い船を想像していたので。



ああいう規模の船旅だと、乗客は少人数しかいなく、しかもしょっちゅう顔合わせることになる広さしかないので、嫌でも交流しなければならならず息が詰まりそう。限られた人たちだけの落ち着いたラグジュアリーな旅ということなんでしょうが、これは同乗者がどんな人かによってかなり旅の質が左右されますね。それこそクラパトン夫人みたいな自己中な人がいたら台無しです。当時こういう船に乗る人はああいう社交にも慣れているんでしょうが、私だったら大金払ってする旅がこれだったらしないほうがましだわ~とか思ってしまったり。そんぐらいクラパトン夫人は見ていて不快な人でしたね~。

 ⇒アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタばれあり

船



犯人も今までよく耐えたよね、あれは殺意が湧く瞬間があっても理解できるわ、とつい犯人に同情したくなるぐらいの被害者の性格の悪さでしたが、でもよく考えたら自分でそういう人を選んで結婚したわけだし、嫌なら離婚すればいいのに殺したのは明らかにお金目当てだし、やっぱり犯人の方が人でなしか。そうは思うのに結末にモヤッとしたものが残るのは、おそらくエリー・ヘンダーソンのためでしょうか。

クラパトン大佐に妻殺しを決意させたのは、大佐を想う同年代の淑女エリーではなく、もてはやしてくれる女の子たちのぴちぴちとした若さだった。あの子たちとどうこうというのではなく、まだ人生やり直せる、俺の人生まだ終わってない、的な夢を見るには、若さというまぶしい原動力が必要だった、というのがエリーの口から語られるのが何とも言えません。自分には離婚にも殺人にも突き動かすだけの影響力はない。年をとったことへの諦め、愛する人の人生にとって自分は端役に過ぎない哀しみが漂うラストがこの話のもっとも好きなシーンです、ヘイスティングズのラクダのシーンでなく。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

polepole ( ぽれぽれ ) 木製 雑貨 ぽれぽれ動物 ラクダ 【RCP】.
価格:864円(税込、送料別) (2016/11/24時点)



なお、原作では、もともと心臓の悪かったクラパトン大佐が、ポアロの腹話術を見て犯行がバレたことに気づき心臓麻痺起こして、あ、死んじゃった、というちょっとびっくりの展開。しかもポアロはそうなる可能性を見越していたというもの。さすがにここはドラマでも変えてきましたが、あっさり死んじゃうのとあっさり自白するのとではどっちもどっちか…?大佐が生きているので、エリーがポワロの種明かしを残酷で卑劣だと責めるのがちょっと浮いてしまった気も。

この話、最後の舞台がかった種明かしの割に確たる証拠もないので、犯人を追い詰めるのが今一歩足りないのでミステリーとしてはなんとなく不満が残ります。クリスティ作品では舞台芸人とか俳優・女優が異様にスキルが高くてwこの人たちが犯行にかかわってくる話が多いですが、正直言って買いかぶりすぎというか芸人・俳優というだけで普通そこまでの能力はないだろう、と感じるものが多く。この話もトリックにちょっと無理があるよな~。でも上記のエリーとポワロのやり取りがとても印象的。最後の「殺人は許せませんからね」というのはシリーズ全体にわたって考えさせられるテーマですね。


関連記事

 名探偵ポワロ,