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【ドラマ】名探偵ポワロ『西洋の星の盗難事件』―良き母と、良き妻と



『西洋の星の盗難事件』

原作は『ポアロ登場』収録の短編。旧訳ハヤカワでは「〈西部の星〉盗難事件」になっています。

西洋の星だの東洋の星だの呪いだの怪しげな中国人だの、読んでて( ´,_ゝ`)プッとなる設定満載で、こういう大味な感じの話は普段は全く好きじゃないんですが、なぜかこの原作は好きでした。多分、宝石とか女性陣が華やかだからw 今回ドラマ版は始めてみたのですが、やっぱりドラマ版も面白かった。クリスティ作品は素敵な女性陣が登場する話は面白いですよね!いや、普段ミス・レモンが素敵じゃないわけでなく。

あらすじはNHKオンラインより―
2つのダイヤ“西洋の星”と“東洋の星”の持ち主にそれぞれ謎の脅迫状が届く。

ベルギーの女優マリーに「ダイヤを返せ」という謎の脅迫状が届く。それは“西洋の星”と呼ばれ、“東洋の星”と対で中国の神像の目にはめられていたものだという。同じころ“東洋の星”を持っているレディー・ヤードリーにも脅迫状が届く。一方、ジャップ警部はある実業家が盗品のダイヤを買いつけようとしているとの情報を得て、その人物を追っていた。


思った以上に西洋の星がでかいwww ペーパーウェイトか。あれの1/10ぐらいのを想像していたわ、それでも十分でかいってのに。庶民の想像力をはるかに超えるイギリス貴族の財力、恐るべし。

「散髪はお互いのパートナーシップで成り立つものです。私の髪と、そしてあなたの技術と。」

名言来ました。散髪がそんなに大変な共同作業だったとは…!いつもおまかせしますで座ってるだけの私は見習わなければなりません。それにしてもこんな 面倒な変人 お客にも顔色一つ変えず黙々と仕事を進めるなんて、ムッシューベネットといいこの間の仕立屋さんといい、ポワロ行きつけのお店の主人はポワロの扱いは慣れたものですね。

ミス・レモンにお花を却下された時のポワロの「ダメ?」がとても可愛かった。思わずスーシェの「ノン?」と聴き比べてみましたが、やっぱり熊倉さん版の方が可愛さ倍増。吹き替えポワロは可愛いな~。いつもは大抵日本語吹き替えバージョンで聴いているのですが、そのまま英語版で見ていたら、なんと後半マリー・マーベルとはフランス語で会話していました。ベルギー人同士、フランス語の方が心が通じるものがあるんでしょうね、ああいう場面では特に。この演出は素敵。何言ってるんだか全くわからないけど。

そうそう、原作ではメアリー・マーベルはアメリカ女優でしたが、ドラマではポワロさんの同郷ベルギー女優のマリー・マーベルに。なので冒頭のポワロさんの浮かれっぷりや、ヘイスティングスの「ベルギーで映画つくってるんですか?」の失礼発言はドラマオリジナル。

今回ポワロさんの名刺を始めて見るましたが、黒とオレンジで意外とシンプル。なんか勝手に紋章でもついてそうなイメージだったわ。でもシンプルな構成と2か所の■が、幾何学模様好きのポワロさんには合っているのか。肩書は「Private Detective」。

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以下、ネタバレあり

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原作では、「ダイヤの買い手がついた」という報は事態を進展させるためにポワロが流した嘘でしが、ドラマでは実際に買い手がついているので、容疑者が増えて複雑になっているのかな。でもさすがに弁髪の中国人が…!とかいうけったいな話でレディー・ヤードリーが嘘ついているのはバレバレなので、あまり難しくはなっていないかも。

ゆすりの被害者とは言えそもそもの原因は不倫をした自分にあるレディ・ヤードリーの元にダイヤは戻り、ダメ男に惚れたマリー・マーベルからは夫もダイヤも無くなった。元の持ち主はレディ・ヤードリーなので元に戻っただけですが、マリー・マーベル自身に落ち度がないだけになんか可哀想な気も。

レディ・ヤードリーは、「夫の」おじいさまの代から受けついだダイヤを、浮気相手へ口止め料的な感じで渡しているわけで、よく考えると結構酷いw 酷いけど、まあ、これは言えないよねぇ。「カルフォルニアであった時、あの人とっても素敵でした」というのが何とも言えません。悪党とのつながりができてしまうきっかけ部分で、最初は良い人だった、最初は魅力的だった、というのが怖いな~と。最近世間で話題の野球賭博の話なんかも思い出したり。

同僚やら身近な隣人やらの普通の顔をした人と、ちょっとぐらいいいだろうと羽目を外しただけのつもりだったのに、それが実は反社会勢力につながっていたとか怖すぎ。そんな身近なところに罠が潜んでいるとは思わないもの。ちょっと得したい、ちょっといい思いしたいと思ってしまうのは、事の良し悪しは別にして理解はできる気がします。

あまりドラマ版では触れられていませんが、原作ではポアロが、ヤードリー邸に行った時に子供と遊ぶレディ・ヤードリーを見て、ていねいにお辞儀をしながら「あなたはいいお母さまですな」と言う場面があります。もともと女性には優しいですが、「良きママ」にはさらに甘いポワロさん。これが彼女の名誉を守る形で解決した理由でもあります。

一方のマリー・マーベルは、原作では離婚もせず、ポワロも「ダイヤは失ったけれども宣伝になってよかったんでないの?」程度の軽いノリですが、ドラマでは涙の結末。あんな男いないほうがマシだというポワロの説には100%同意しますが、それでもダメ男でも、愛した人に去られて静かに泣く姿をみると可哀想になりますね。「馬鹿な人ね。でも可哀想な人なの。あの人才能なんてなかったのに、それが分からずいつも良いところ見せようとして無理してたの。」このセリフにはホロッと来ます。彼女のこの辺の情の深さがダメ男に好かれてしまう原因か。

片方は良き母で、片方は良き妻で、そしてどちらも男性を見る目がない女性2人。私はどちらかというとマリー・マーベルの方が好きですが(声も可愛いしw)、どちらの女性もわりと人間らしくて共感できました。惜しいのは、ロルフが美女二人が惚れるほどのいい男ではなかったこと。なんだあのいかつい眉毛男は。毛皮の着方も成金っぽいし。原作では大スターで、ロマンスの主人公にうってつけと思われるほどのハンサム設定。殆ど記述はないですが、クリスティいつもの「犯罪者は魅力的」な感じの登場人物なのでしょうな。レディ・ヤードリーも甘い夢を見たのでしょう。ほんの一時の浮気のはずがずるずると罠にかかって引き返せなくなった彼女も、一応ロルフと一緒になって周りを騙そうとしたわけではなく、自ら告白しようとポワロの所に助けを求めに来たわけです。そこにヘイスティングズが!いつもどおりヘイスティングズが邪魔をしおって!

ヘイスティングズは今回はふんぞり返って推理を披露するわ「僕のいうことを聞きゃぁ良かったんですよ」やらやたら偉そうで。このウザさ加減は原作に近い。原作のヘイスティングズは、紳士然とした態度なので良い人そうに見えるものの、中身は何一つ当たらないくせにやたらと根拠なき自信にあふれているという、良い人の皮を被った無能なポアロです。ん?よく考えると酷いな。何一つ良いところがないじゃないか。一応友人思いで非常に義理堅いですが、でもポアロのことは老いぼれただのなんだので度々憐みと哀しみの混ざった目で見ていたり…。うーむ。相変わらず原作ヘイスティングスの話になると悪口が止まらん。毎回書いていますが、原作ヘイスティングズは特に嫌いというわけではありません。話進まないしどうせ推理間違ってるんだからちょっとすっこんでろ、と思うことがなくはない、というだけです。ドラマのヘイスティングズはもうちょっと好青年っぷりがアップしていますよね。

ちなみにドラマ版のこの話のラストはホタテでしたが、原作版のラストは、僕のいうことを聞いておけばと得意になっていたのに結局は最初から最後までポワロにコケにされていたのに気づいて、くっそ!くっそ!と怒り狂っているヘイスティングズで〆です。どちらも素敵なラスト(*´ω`*)

しかし最終的には、ポワロはジャップ警部の仕事の邪魔をしてしまったということでよいのだろうか…?可哀想なジャップ警部。

さて、明日3月12日(土)長編「スタイルズ荘の怪事件」の放送は、いつもより早い午後3時00分からスタートですぞ!お見逃し無いよう、モナミ。


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