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【ドラマ】名探偵ポワロ『スタイルズ荘の怪事件』 ―初々しいポワロとヘイスティングス



『スタイルズ荘の怪事件』

デビュー作『スタイルズ荘の怪事件』が、20話目にしてようやくドラマに来ました。一番最初の物語だけあって、時代設定も原作に忠実に第一次世界大戦中になっているようです。1930年代が舞台の普段のドラマよりも10~20年ほど前だけあって、女性はスカート丈が長かったりと服装も髪型ももうちょっとクラシックに。ポワロもヘイスティングズもちょっと若い感じ?ポワロに向かってムッシュー・ポワロ、と呼びかけるヘイスティングズが初々しく新鮮です。あらすじは原作感想に書いたので省略。

原作感想はこちら⇒【本】ポアロ『スタイルズ荘の怪事件』 ―ポワロシリーズの始まりと終わりの場所(アガサ・クリスティ著)

「さあ!歌を歌いましょう」で大の大人が一列になって歌いながら通りを渡る様はまるで幼稚園児のようです。ポワロさんは幼稚園の先生的なポジションでしたが、引き連れていたのは警官時代の部下とかなんでしょうか。ちょっとなんだかさらに変わり者度が増しているような。あの時代のポアロさんと行動を共にするのは大変そうだ。今はあれでも年取って丸くなったんですかね。

「なぜベルギー人どうしで英語を話さなければいけないかと言ってるのです」―物語の舞台裏を登場人物自らが説明してくださってありがとうございます。『ヘラクレスの難行』でポワロが登場人物に、「なぜ君は自分のことをポワロと呼ぶんだ!」と25年間やって最後の最後に唐突に素朴な疑問を突っ込まれていたのを思い出しました。この間の『西洋の星の盗難事件』ではポワロはフランス語をしゃべっていましたが、今回はベルギー人どうしでも英語のみ。フランス語しゃべれる俳優さんが少ないんでしょうかね?我々はこの国のゲストだから、という返答が素敵。郷に入っては郷に従え的な考え方は、あちらにもあるんですな。

こんな夜遅くにと言っていたシーンで窓の外がとても明るかったので、舞台は夏か?そういえば6月とか言っていたような、それにしても明るすぎだろう北欧じゃないんだから…と思って調べたら、イギリスも北の方になるとスウェーデンやノルウェーと緯度が一緒だった。知らなかった…。スタイルズ荘はエセックスにあるようなのでそこまでではないですが、思ったよりもイギリスって緯度が高いんだ。世界の日の入り日の出が調べられるサイトで試しにロンドンの6月を調べてみたら、日の出が4時半、日の入りが21時半でした。21時半…。

『スタイルズ荘の怪事件』に関しては原作感想をすでにブログにも書いて、どういう感想書いていたかなと久しぶりに自分のエントリーを読んでみたら、半分ぐらいはヘイスティングズの悪口だったwww これは酷い。酷いけど、だって『スタイルズ荘の怪事件』のヘイスティングズはほんとなんだこいつ状態なんだもん。スタイルズ荘はヘイスティングズのウザさがキラリと光る作品で、ドラマではどこまでそれが再現されるか恐れおののいていましたが、メアリーが自分に惚れていると勘違いするところや、自信たっぷりに完全に間違った推理をするところが省かれたりと、かなりマイルドになっていました。でもシンシアにプロポーズするシーンなんか、うわ~来るぞ来るぞやめてやめて、と、とサムくて鳥肌たってんだかむしろ楽しみにしているんだかわからないようなゾワゾワ感を味わうことができ。シンシアは冗談にして流してくれて優しい子ですな。こんな変態紳士はもっと邪険にあつかって良いのよ。

もうヘイスティングの悪口ならいくらでも言えるので、これぐらいにね。発作を起こしたイングルソープ夫人の部屋のドアをぶち破ろうとした時も、友人の体を一二の三!でドアにぶつけるだけで、ちゃっかり自分はぶつかってなかったし!


そう言えば原作感想で「こより入れとは何ぞや?画像検索してもティッシュ鼻に突っ込んだ画像しかでてこねーぞ!」と書いていたこより入れが映像で見られて満足です。何に使うのかと思ったら、暖炉の火をランプに移すのに使っていましたね。なるほど、だからマントルピースの上にこよりがあるのね。


⇒原作感想はこちら:【本】ポアロ『スタイルズ荘の怪事件』 ―ポワロシリーズの始まりと終わりの場所(アガサ・クリスティ著)
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以下、ネタバレあり

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こより入れと言えば、ドラマしか見ていない人は、なぜ犯人が手紙を持ち出せずにこより入れに入れたか、納得できるんでしょうか?手紙が体から発見されるのを避ける、という面だけだったような。原作だともうちょっとだけ説明があって、話の最初の方に、イングルソープ夫人が「屋敷では戦時生活をしており反故紙一つ無駄にせず袋に入れて供出しているんです」と言う場面があります。イングルソープ邸では紙が捨てられないので、万が一紙がそこらへんにあるのが見つかると目立つということなんでしょうね。

このセリフはイングルソープ夫人の、慈善事業にも精を出し親切で正しくはあるもののやや独善的で人に居丈高に命令する、イメージ的にはPTA会長的な人物像を表すエピソードの中の一つとして出てくるので、最初読んだときはここが伏線とは気づかず。ドラマではここはカットされて、ごみ箱の中をチェックしているシーンがちょっと映るのみだったような。

反故紙だって大事に取っておかれるスタイルズ荘では、そこら辺に紙があって紛れてこませることのできる状況でもなく、紙は捨てても全てチェックされる。すぐそばにポワロ達の足音が迫っている状態では、この手紙を部屋の外に持ち出すのは危険。ここを逃れても書類ケースの鍵をぶっ壊したのはすぐ見つかってしまうだろうから、すぐに紙の大捜索が始まる。こういった状態で、この近辺で警察にもメイドにもみつからず安全に隠せる場所、紙があっても不自然ではない場所、ということで目についたのがこより入れだったのでしょう。

しかもこの手紙、原作ではわざわざ手紙を書いたのは、当初の殺害予定日に夫人が死ななかったので、何か起こったのかとイヴリンが狼狽しないように、夫人が薬を飲まず1日遅れるだけだと知らせようとしたからなのですが、ドラマだと単にバカップルの浮かれポンチなラブレターにw

この話は事件の日、屋敷で夫人と誰かの間に諍いが勃発し、その後事件が起こったという流れですが、最初のメイドが立ち聞きしていた口論と、その後の場面で夫人が手紙を見ながら「大変なショックを受けた」と言った事柄というのが、全く関係のない別々の事だったというのが面白いなと思う。原作読みながら、立ち聞きしていた口論の相手は実はイングルソープではないんじゃろ?わかっておるぞふぉっふぉっふぉ っと悦に入っていたら、その日は2つ事件があって口論はおまけで本命の手紙の方は別人物だったとか…。いつも通りすっかり騙されました。本で読んで目をくらまされたものも、ドラマで見ると結構あからさまでバレやすくなったりすることがありますが、これはいい感じにぐちゃぐちゃで分りづらかったわw

ポワロが事件の解決と同じぐらい重点をおいたのがカベンディッシュ夫妻の仲の修復だったのですが、ドラマでは結構省かれていました。カベンディッシュ夫妻だけでなく、シンシアとローレンスあたりもかなり簡略化され、事件の謎解きだけに絞ってかなりシンプルな筋に。

ドラマの描き方だとメアリーが嫉妬深いというのは唐突な感じがするかもですが、原作では、一見淑女風なものの、手紙を盗み見しようと忍び込むだけでなく、夫に嫉妬させようとわざとバウアースタイン博士(ドラマ未登場)と仲のよいふりをしていたりと実はウザキャラ。今で言うと夫のスマホを盗み見する妻みたいなもんでしょうか。なんかどうしようもない夫婦ですけど、でもメアリーが馬に乗って、怒りながら車に乗った夫と対峙するシーンは好きです。美人で気の強い女性が乗馬をしている姿は恰好良いわ~。

証拠を求めてそこら辺を犬の様に嗅ぎ回るのはジャップ警部にさせておけばいいんだ!なポワロが道具を持ち歩いてイングルソープ夫人の部屋を調べたり、『エンドハウスの怪事件』 ではプライベートな手紙を読もうと下着ダンスまで開けてヘイスティングズに止められていたのに、ここでは弁護士に遠慮して書類ケースをあけなかったり。一番最初の話なのでまだポワロの捜査方法が固まっていないのか、あるいはキャラ設定が固まっていないのか、ちょっと違和感がありますね。そして何もできないのに大真面目な顔で手袋はめて、道具をそっとさしだすヘイスティングズが可笑しい。俺、この戦争が終わったら探偵になるんだ…!と語っていた夢がかなって、まじめな顔しながらワクワクしていたんだろうなw そしてこの二人が部屋を荒らしまわっていると、『ベールをかけた女』で全身黒タイツ黒づくめでこそ泥していた二人を思い出して笑ってしまうわ。

来週は短編に戻って「100万ドル債券盗難事件」。いつもどおり4時からです。


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