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【ドラマ】名探偵ポワロ『プリマス行き急行列車』 ―重い


『プリマス行き急行列車』

原作は 『教会で死んだ男』収録の短編。ドラマではまたしても事件が起こる前からポワロ介入型に変更、そしてまたしても出てくる男がクズです。

「いいよぅ君が本当に望んでいるなら、ぁでもまさかこのまま…今ちょっと困ってるんだ」
「お金の事?1ペニーもあげないわ」
「君がそんなに冷たい女だと思わなかった」

 ( ゚д゚ )
これが人に物を頼む態度かwww そりゃ離婚もされますわ。 お金をタカる方がなんでこんなに態度がでかいんだろう。まずはあらすじ―

オーストラリアの百万長者の娘で、夫との離婚を望んでいるフロレンスは、離婚を考え直しお金を貸してくれるよう頼みに来た夫ルパートをすげなく追い返す。そして以前父親にハゲタカと目され仲を裂かれたロシュフォール伯爵と再会し、週末の旅行の際の逢引の手はずを整えたが、その列車で彼女は死体となって発見され、持って行った宝石箱は消え失せた。

原作では父親は娘とロシュフール伯爵との不倫のことを最初ポワロに隠していましたが、ドラマでは逆に別れさせ屋的な依頼までするオープン具合。離婚に向けて着々と進めているから不倫もOKなのか?その他、雑誌が新聞になどいろいろと細かい部分が変わっていますが、一番の変更点は作品の雰囲気。原作では、原作の短編によくある”ポワロがササッと解決しましたよ”テイストのライトな読後感だったのが、ドラマではグッと暗く、短い中でも人を殺すということに焦点をあてた重みのある話になっています。


アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒原作収録短編集の感想はこちら:【本】『教会で死んだ男』―人生の終わりに何を願うか(アガサ・クリスティ著)

以下、ネタバレあり

ミレニアムホテルパリオペラ


ヘイスティングスがルパートを、ジャップ警部が伯爵をそれぞれ疑い捜査していますが、この組み合わせが可笑しい。だめ夫組と一筋縄ではいかない組みたいな。ヘイスティングズもルパートと一緒だとしっかりして見えるね。そして当然のことながら、二人の疑う相手は間違っており、メイドが真犯人。

宝石を目の前に荷造りするシーンを見て、こんなの目の前にして働いたら絶対ふらっとする瞬間はあるよなと思っていたので、最後の「あれだけの宝石があれば一生安楽に暮らせる」というセリフは結構納得がいきました(殺していいというわけではもちろんないです)。まあでも今回のメイドは、もとから殺すつもりでメイドとして入り込んだわけなのでちょっとちがいますが。

メイドさんはクリスティ作品につきもので、出てくると村人その1・その2的な端役か、よくてこそ泥程度に流し読みしてしまっていましたが、改めて考えると自分が一生かかっても稼げないような額の宝石やらなんやらを、当たり前のようにホイホイと持ち歩く人々にじっと仕えるというのはなかなかきついものがあります。魔がさす瞬間があってもあまり責める気にはならない。逆に言うとポワロシリーズだったかミス・マープルシリーズだったか忘れてしまいましたが、信頼のおけるメイドは非常に価値がある的なセリフをいう傑物の女主人がいたような気がしますが、メイドを雇うというのはそれだけ大変なことなんでしょうね。さらにはこそ泥、殺人鬼までメイドの立場を利用して入り込んでくるとなると、信頼できるメイドを見つけるなんて無理なんじゃと思ってしまうわ。そんなの探すぐらいなら自分でやった方が楽だ、と思ってしまうのは庶民ゆえの発想か。

今回は殺害シーンの鮮血したたる再現と、ポワロの生々しい殺害方法への言及、娘を亡くした父親の手紙のラストシーンと、全体的にいつものほのぼのムードの少ない重苦しいアレンジになっています。前に短編でシリアスやられてもいろいろと唐突になって置いてきぼり感があると書いたけれど、これはすとんと納得できる話に。ただ父親の心情に重きを置いたせいか、いつもみたいに登場人物増やしてわちゃわちゃと筋をこんがらがらせることがなかったので、その分犯人はわかりやすかったような。あの青い服が着れる女性はメイドぐらいしか出てこないので。綺麗な色だったのであの青はすごく目につきました。へたすると事務員の制服っぽくなりそうだけど。

この作品はクリスティの他の長編の元になった作品で、原作読んだ限りではそっちの長編の方は好きだけれどこっちの短編『プリマス行き急行列車』の方には特にこれといって思い入れは無かったのですが、ドラマはなかなか印象的でした。


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