旅行鞄にクリスティ

海外旅行とアガサ・クリスティのブログ 最近はコスメ・ファッション・マイリトルボックスレビューに侵食されぎみ


【ドラマ】名探偵ポワロ『 スペイン櫃の秘密』 ―卑劣な犯人に震えながら立ち向かう乙女ポワロはこちらです


『 スペイン櫃の秘密』

原作はポワロ物の中で私の唯一の未読短編集 『クリスマス・プディングの冒険』に収められた短編です。ただこの「スペイン櫃の秘密」は、短編集『黄色いアイリス』等に収録の「バグダッドの大櫃の謎」をさらに長くした話で、そっちの方は読んだことがあります。なんでわざわざ、「バグダッド大櫃」から「スペイン櫃」に変えたんだろうか、大きさも小さくなって。

あらすじ↓はNHKオンラインから引用

妻の不倫を疑うある男。その不倫相手の家で死体となって発見される。

ポワロは知人のレディー・チャタートンから奇妙な依頼を受ける。彼女の友人のマーゲリートが夫のクレイトンに命を狙われているというのだ。ポワロは調査のため、クレイトン夫妻が出席するリッチ少佐のパーティーに行く。しかし、クレイトンは仕事でパーティーを欠席し、マーゲリートは妻を亡くして間もない少佐と親密な様子だった。翌朝、少佐の居間のチェストの中からクレイトンの死体が発見される。


今回はリッチ少佐宅のパーティや軍人クラブといった舞台・小物等、見た目でとても楽しめました。まずはマーゲリート・クレイトンが決闘沙汰になるのも納得の美人。手紙を書いている横顔のシーンは、何かの絵画に出てきそうな。そしてポワロさんの携帯灰皿が小さなハート型だったり。男性でああいうものを使うとは、なんてお洒落さんなんだ。

そこに続くポワロ真顔のダンス。顔が硬直しておるwwと足元を見たら以外にも軽やかな足さばき。なんとまぁお上手ですねと思ったら、音楽がだんだんと不穏になっていき…


アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタバレ

パーティ クレド



この殺し方はなかなか無理があるのではないでしょうか…。まず被害者が、カーチス大佐が剣を差し込みやすい位置に空気穴をあけてくれるとも限らず。覗き穴といえどずっと覗いているとも限らないので致命傷になるような恰好をしてくれている保証はない。そして覗いていたらいたで、下手したら剣に気づかれてしまう。刺す方からは中の状況は何も見えないわけで、誰にも気づかれず1回で上手いこと殺せるなんて奇跡だわ~。でもなんか考えるだけで痛い殺され方だから、あまり突っ込んで考えないようにしよう。

なお、原作のさらに元ネタ「バグダッドの大櫃の謎」では、クレイトンはカーティス大佐にパーティー前に会った時に睡眠薬を盛られていたため櫃に潜む間に眠ってしまっており、カーティスはそっと櫃の蓋を開けて刺す、という犯行方法。こっちの方法の方が、蓋を開けるのだけは目立つけど衝立で隠してあるし、クレイトンは寝てるから確実に急所を狙えそうなので、より成功しやすそうではあるような。

でも考えるだけで痛い話はこのぐらいにして。レディー・チャタートンは、キャラが立ってる割に最初しかでてこなかった。ポワロを事件に関わらせた一番のお手柄なのに。私は、クリスティ作品にたまに出てくるこの手の「私に任せなさいなホホホホ」的おせっかいおばちゃんが結構好きなので残念ですw 「バグダッドの大櫃の謎」でも最初しか出てこないけど、一応レディー・チャタートンの紹介でマーゲリートがポアロに事件解決を依頼する流れ。ドラマ版だと、なんかわりと情報話すだけのその他登場人物的な。

今回の見どころは、フェンシングの剣を突きつけられて乙女のようにプルプルと震えながらも犯人を問い詰める、女子力高いポワロでしょうか。どう考えてもそのリアクションは気丈なヒロイン系。そしてバーンと現れたリッチ少佐、まるでヒロインを助けるナイトのよ…

「戦いなさい大佐!」

敵をけしかけておる…( ゚д゚ )
捕まえないの?なぜか始まる決闘、そして安全圏から心配そうに覗いているポワロ | |д・)

…捕まえないの?

カーチス大佐が無事に負けたからよかったものの、サクッと一突きしていたらどうするつもりだったんでしょうね。ジョン・リッチは、最初見た時はなんだこのしゃくれ男と思いましたが、フェンシングの余裕の戦いぶりを見たらなかなか恰好良く見えてきた←すぐ暗示にかかる。そしてカーチス大佐は最初から最後までダサかった。そういえばこいつ2回決闘して2回とも共負けてる。さすが勘違い束縛男、ダサすぎる。

改めて最初から見返すと、冒頭のオペラはメインの話とリンクしていたのですね。オペラは全く知識がないのでリゴレットをググって調べたところ、「道化師リゴレットは、自身の主であり娘を辱めたマントヴァ公爵の殺害を企て、殺し屋に依頼。しかし公爵を想う娘はその身代わりになって死ぬ」という話のようです。「嫉妬深い父、辱められた娘、父親はその男の命を狙う。しかし娘の心を理解していない。結果は破局です。」というポワロさんの解説を見るに、今回の話は、娘(またはそれ程離れた若い女性)に一方的な、愛情とみせかけた自己愛を、正義を振りかざしながら押し付ける年上男の話のようです。

いかにもマーゲリートのためといった風情で実は自分のために邪魔者を排除しようとしている、このへんの庇護にみせかけた独占欲は、なんとなくモラハラ男を思わせる不快さ。ビリヤード室でジョン・リッチに「マーゲリートが迷惑しているから近づくな」と命令しているシーンは、実力が伴わずプライドだけは高い束縛男のいやらしい感じが良く出たシーンで。マーゲリートは全く迷惑してなくてリッチ少佐と相思相愛と言う滑稽さ。全然相手にされてないし…。

そういえばこれまでポワロさんが寝てるシーン何回か出てきたような気がするけどあまりよく見ておらず、今回のカーチス大佐からの呼び出しのシーンを見て、ポワロさんのおひげは眠る時でもピンと上を向いているというのが驚きだったわ。あれってポマードか何かで固めているんじゃなくて、天然で重力に逆らっていたの…?いや、でもそういえばいつぞやのマリオスタイルの時は下向きにボーボーなっていたような。あれはカーティス大佐のお誘いを見越して、身なりを整えて眠っていたということか。やっぱりお洒落さん。

お次は「盗まれたロイヤル・ルビー」です。


関連記事

 名探偵ポワロ,