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【ドラマ】名探偵ポワロ『イタリア貴族殺害事件』ー再び光るポワロの顔芸

『イタリア貴族殺害事件』 

原作は短編集『ポアロ登場』に収録の短編。

ミス・レモンが珍しく遅刻をと思ったら下を向いて口ごもりモジモジと手袋をいじり…このただならぬ雰囲気、もしかしてミス・レモンに恋人が?原作ではポワロに姉どころか家族がいるなんて想像できないと酷いこと思われていた機械人間ミス・レモンだったのに、ドラマ版のおちゃめで可憐なミス・レモンにはなんとボーイフレンドですと!なんだこの待遇の差は!と思ったところで、

 ポワロ 「ミス・レモンにボーイフレンドが」
 ヘイスティングズ 「ま~さかっ」


ひどいヘイスティングス。確かにそう思ったけれども!すんごい真顔で驚いてなんて失礼なw 女性に度々直球すぎる一言を浴びせているヘイスティングスは、英国紳士の仮面をかぶったただのバカ正直か、と思ったら、

 ポワロ 「左手をあげているように見えるでしょ」
 ヘイスティングズ 「いいえ」


もしかしてバカ正直じゃなくてただのバ…。

以下あらすじ―

ポワロが知人宅で食事中に、伯爵と名乗る人物から助けを求める電話が…。

ポワロはミス・レモンの恋人のグレイブスをお茶に招待する。彼はある個人の秘書をしていて、雇い主が恐喝事件に巻きこまれていることをポワロたちに打ち明ける。その後、ポワロとヘイスティングスが知人の医師の家で食事中に、ロンドンに住むイタリア貴族のフォスカティーニ伯爵から助けを求める電話がかかってくる。ポワロたちがかけつけると伯爵はすでに死亡していた。
引用元:NHKオンライン


アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒原作収録短編集の感想:【本】『ポアロ登場』― 割とすっとんきょうなポアロです

以下ネタバレ

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車の販売とかマスナーダとかいろいろドラマオリジナル要素は合ったけれども、大筋は原作と変わらず。召使が強靭な胃袋に物言わせて食べまくってアリバイを作るというインパクトあるお話w なお原作では来客は2人という設定だったので、なんと3人前食べてます。もうお腹いっぱい。でもそんなのどうでもいんです。ミス・レモンのお相手があんな見栄っ張りの小物だなんて…。しかも人殺しとは。なんでも完璧にこなすミス・レモンだからダメ男には引っかからなそうな気もするのに。でもそういえば同じくポアロ物の有能な秘書の出てくる話でも、長年仕え惚れた相手は殺人犯だったので、有能な秘書はダメ男に惹かれるものなのか。

しかし、見栄っ張りな嘘をついて虚勢を張る雑魚っぽい人物像と、場数を踏んだ恐喝者を殺して漁夫の利で横から大金かっさらう大胆な犯行の人物像がいまいち合わず気になります。人間とは思いがけないことをするものだと言われればそれまでですが、なんとなくしっくりこないわ。なんだか同じくクリスティの書いたミス・マープル物の『予告殺人』でのマープルさんの言葉を思い出します。女性相手に適当なホラを吹いて自分を大きく見せ、少額の小切手をちょっと偽装して小金を稼いだり小銭を誤魔化したりしていたチンピラウェイターが殺人犯と目された事件で、「ああいう小物は誰かをピストルでホールドアップして殺人を犯すなんてできない、コソ泥がせいぜいでそういう殺人のできるタチではない」として彼が犯人の身代わりにされたことを見抜いた話。

殺人犯がミス・レモンの恋人やら経歴詐称してたやらはドラマオリジナルなので、そこだけ犯人の小物っぽさがでてしまって浮いてしまっているように見える。とは言え、ミス・レモンにあんな小物似合わないわ!という私の願望の押し付けからそう見えているだけかもしれん。ミス・レモンの相手があんなんなんて…

デートに夢中で遅刻するミス・レモンに対し、いつもの癇癪は起こさずにっこり笑ってやさしく許すポワロさん、お相手を事務所によんでおもてなしと言う名の値踏みはするし、完璧に娘の恋を見守るパパポジション。いつもの推理力でダメ男の人間性を見抜いて、追い出してやればよかったのに!

一方、もしかしておバカなんじゃと思ったヘイスティングスですが、ディナーテーブルの上に乗っていた細かい物や写真の隅にちょろっと書いてあった船の場所を正確に記憶、犯人確保の一助に。見たもの・聞いたことを一言一句正確に探偵に(=読者に)伝えられる素晴らしい記憶力を持ちながら頭の回転はひたすら鈍いという、探偵のお伴として持つべき才能を今作でもいかんなく発揮しています。ついでに「この悪党ぅ!」とグレイブスをパンケーキのようにひっくり返してミス・レモンのかたき討ちを。大活躍じゃないですか。


とミス・レモンの恋人ネタに心を奪われて話の内容全く入ってこず。だって我らがミス・レモンに恋人なんて…そんな。結局誰が誰を恐喝してたの?やたら美人のねーちゃんは何者だったんだ。そうそう、珍しくすごい美人出て来た~、しかもヘイスティングズもたじたじの車の詳しさ、恰好良い色白美女だわ~と思ったら悪者一味だった。ショック。いや、でも美女にはやはり悪党が似合う。で、誰が黒幕?誰が一番悪者?とかいまいち話がよくわからんけどまあいいや。ミスレモンはいつも通りに戻ったしヘイスティングスの車はちゃんと壊れたし、最後のポワロさんの顔芸にまた全て持ってかれたし。

今作でもフォスカティーニ伯爵の家で(ついでにポワロのマンションでも)猫がニャーニャー言ってましたが、ドラマ版スタッフにはネコ好きがいるに違いない。原作では利口な犬が何度も出てくるのでクリスティはきっと犬派。ネコなんか出てきたっけ?全然覚えがない…いや出てたわ、恐れ多くも主人公様エルキュール・ポアロの目は、ここぞという時にきらりと煌めくネコの目をしていたんだわ。ドラマの目ヂカラあるスーシェポワロだとネコ度も倍増、顔芸も光る。

で、車を買う条件の3つ目はなんだったんでしょうね?最後に明かしてくれるかと思ったけど、なにも無くエンディングに。ちょっと!車買う時どうすればいいの?!

来週は『チョコレートの箱』、ポワロさんのベルギー警察時代のお話、そしてポワロ唯一の失敗談。楽しみ~。


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