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【ドラマ】名探偵ポワロ『ヒッコリー・ロードの殺人』 ―お下劣回(主にジャップ警部)


『ヒッコリー・ロードの殺人』

う~ん面白いような残念なような、なんとも感想にこまる話。原作もそこまで好きでもないので改変自体は良いのですが、数少ない好きだった部分がなくなってしまい、でも話としてはハラハラドキドキで面白く、そしてレギュラー陣のエピソードはいつも以上にキレキレでぶっ飛んでおりw こんなお下劣回に出たらイメージに関わる!と逃亡した英国紳士(仮)のヘイスティングスは一回お休み。

あらすじはNHKオンラインより―

ある学生寮でたて続けに起きた盗難騒ぎ。それは連続殺人事件の序章だった。

ミス・レモンの姉が管理人をしているヒッコリー・ロードの学生寮で盗難が相次ぐ。ポワロはディナー講演の名目で学生寮に出かけ、オーナーや学生たちに話を聞く。翌日、女子学生のシーリアが盗んだのは自分だと告白。盗難癖があるという彼女だが、全てを自分がやったわけではないという。その夜、シーリアが睡眠薬を飲んだ直後に急死する。


学生がめちゃめちゃ老けておる。海外だと社会人になってから大学に入ったりすることも多いようですが、それにしてもなんだあのコリンの貫禄はw でっぷりと椅子に埋もれパイプをくわえる姿はまさにおっさん。可愛そうなシーリアは、あれのどこに惹かれたんだろう…。

ドラマ化にあたって登場人物が大分減らされていたり人間関係が省略されていたりと、かなりシンプルな話になっています ―と思ったけど、これでも、しかも原作を知っていてもなお、登場人物の顔と名前を覚えるのが大変だったわ。原作のまんまでやっていたら、きっと最後まで誰が誰だか状態だったろうな。様々な国から学生がやってくる国際寮という設定は、普通のイギリス人メインの寮になっていて、2棟に渡っていた建物も1棟に小規模化。他国の学生はサリー以外はいないことに、エリザベスの政治属性はパトリシアへ。パトリシアもナイジェルの恋人ではなくただの知人に。シーリアが書いた盗難に関する謝罪の手紙を犯人が利用し遺書に仕立て上げ自殺とみせかける、というエピソードは全くなくなって、なんかポワロさんが匂い嗅いであっさりモルヒネによる他殺とバレていた。モルヒネってそんな匂うの…?

アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒原作感想はこちら:【本】小物臭漂う若者達に混じった殺人犯―ミス・レモンファンに捧ぐ『ヒッコリー・ロードの殺人』(アガサ・クリスティ/ポアロ)【ネタバレなし】

以下ネタバレ有り


Buly

白衣着て心理的盲点を突いて犯行(メインのではありませんが)を行うというのは『雲をつかむ死』と同じですね。

原作は ”にぎやかな学生寮、ちょっとした取るに足らない物達の紛失に、くだらない恋愛ゲームにいそしむ個性あふれる学生たち学生たち、キンキン声でわめく性悪おばさん” という初め部分のほっこりな日常風景の裏には実はだいぶ前から犯罪が巣食っていて、自分たちもその歯車の一つだったというのがちょっと怖い感じのする話でしたが、ドラマでは最初から密輸組織の影がちらつき怪しさ満点。原作では盗品は16個のうちリュックとスカーフはずたずたに切られており、当初怨恨による盗みかと思わせていましたが、ドラマではリュックの中にダイヤが入っていることもニコレティス夫人が関係していることも、開始10分でばらしておりw この改変はちょっとびっくりしたものの、おかげで原作を読んだ時に感じた「なんか話の中盤で突然密輸組織出てきたよなんだこれ」という無理やり感も消えたので良かったと思う。話はほぼ殺人の犯人は誰か、ということだけにしぼられています。

結構残念なのがバレリー関連がだいぶ省略されていたところ。彼女は斜に構えたところのある、頭が良くて洒落が分かる女性。そして原作ではニコレティス夫人の実の娘であることが最後ヴァレリの口から明かされます。親子そろって犯罪者。ドラマでは3人の内誰が主犯だったのかは触れられていませんが、原作では密輸に関しては「ナイジェルとヴァレリがメイン。おそらくヴァレリがナイジェルを引き込んだ」とポワロは推理しています。てっとり早くお金になるスリルのあること程度の甘い認識でやっていたのでしょうが、手を組んだ相手が悪かった。ナイジェルが非道なサイコパスだと気が付いた時には抜けられなくなっており。

ニコレティス夫人は話のスタート時点ではヒステリックで性悪な女性で誰にも好かれていない様子ですが、彼女が死んだ時にヴァレリだけは、(アルコール依存になる)以前は心のあたたかい愉快な話し相手だったと語る。おそらく犯罪に手を染めてから精神的に耐えられずお酒に逃げたのでしょう。娘が母親を引き込むことから考えてももともと道徳観の薄い家庭だったんだろうとは推測されますが、母親も娘も欲に目がくらみやすい普通のズルい人程度だったんじゃないかな。しかし組んだ相手が筋金入りで、気が付いた時には友人は殺され、プレッシャーでアル中になった母親も殺され、娘は自分を守るためには母親を殺した殺人鬼の手助けまでさせられた。逮捕の直前ナイジェルへの怒りを表しながら犯罪については全て喋ったヴァレリが最後まで黙っていたことがこれで、ポワロに問われて「彼女は私の母でした…」と答えるのが哀しい。ドラマだとその辺がないので、わりとあっさり自白して小物化にさらに拍車がw バレリーすごい印象薄かったな…。

逆にナイジェルは逮捕の様子が追加されていたので、不気味さが出てよかった。原作だとヴァレリメインでナイジェルは逮捕前までのよそ行きのいい子ちゃんの様子しか描かれていないので、なんかいまいち人物像が分からないんですよね。ナイジェルに絞った分、バレリーとあとパトリシアが割を食った感じ。パトリシアはナイジェルの恋人だったのに、ドラマでは政治に傾倒するただのいっちゃってる人に。死にかけの他人の病室に入って、そこになぜか上手いことアルバムがあってしかも勝手に見ちゃってさらに持って帰っちゃうとか。筋書き上殺される役だから、とりあえず殺されるためそうしました風な。サリーの方が目立ってましたね。なんとおとり捜査官役で。あと名前忘れたけど上司の眉毛も目立ってた。どの学生よりも、もしかしたらポワロのヒゲよりもインパクト大だった。ちなみに原作では最後サリーとレナード・ベイトソンは婚約します。

そんで最後の謎解き、まだ犯人の名前言ってないのに、電球取って警官を寮に入れる回想シーンでバッチリナイジェルの顔映っちゃってましたけど!いいのこれ?いやダメだよね?犯人映ってたよね?!「すいませんポワロさん、私もうがまんできません。犯人は誰ですの?」だからあいつだよ、さっき映ってたよ!酷いコントを見ているようだわ。本当は犯人をばらしてからこのシーンに入る予定だったんですかね…。

酷いと言えば、レギュラー陣が今日はキレキレ。ビデで顔洗うとかいろいろ事件以上のインパクトを放っておる。3人の料理対決はどれもいまいち惹かれませんが、あえて言うなら、食べてみたいのはポワロさんの料理かな。見た目はあれでも、豚足と聞くとおいしそう。アジア系の人はあまり抵抗がなく食べられるんじゃないか?ミス・レモンのは、なんか味がなさそうで。最後、まるで子どもに難しい事柄を説明するように、「どうだ、わかるかい?」とポワロの顔を確かめながら優しく丁寧に自慢の「料理」を説明してあげるジャップ警部。

「これが豆です。ゆで豆っていうんですが」

ゆで豆…。

ポワロの煌びやかなディナーセットに比べて、ジャップ警部は生活感溢れる食器に可愛いエプロン。そしてその後も最後まで失速せず(どころか加速して)なんかいろいろ酷い。なんぞこのお下劣回は。奥さんがいないと皿は溜め込むわシャツは焦がすわ、挙句の果てに、主に下方面にボケをかましまくるという謎の症状を発症するジャップ警部のためにも、早く奥さん帰って来てあげて。このままではジャップ警部のイメージが。


殺害人数:4人

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