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【ドラマ】名探偵ポワロ『アクロイド殺人事件』 ―アクロイドさん殺人事件になっておる

『アクロイド殺人事件』

原作を読む前にドラマを見ようとしている人がいたら、先に原作を読むことを強く強くお勧めします。

その有名さゆえに、多くの人がどこかでネタバレを食らってしまうミステリーの2トップが『オリエント急行の殺人』と『アクロイド殺し(アクロイド殺人事件)』。この2つを、全くネタバレ食らわず事前情報なく読めたら、宝物の経験になるよね。もしこの『アクロイド殺し』を知らず、ドラマで始めて見るよ、有名な話だよワクワク、と思って見てしまったらあまりの出来に非常にもったいないことになるので、もしドラマ未視聴・原作未読でこのエントリーを読もうとしている人がいたら、速攻まわれ右して原作を読んだらきっと私に感謝することでしょう…多分。

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以下、思いっきりネタバレ注意!!!


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ちょっと!こんなのアクロイドじゃない~何これ~!最初っから犯人の手記とばらしてる、というか手記は割とどうでもよくなってるし。”物語の語り手本人が犯人だったよ!しかも(犯行自体は語っていないものの)犯行直前直後までしっかり(?)語ってたよ”、という驚きの手法がアクロイドが名作たるゆえんだったのに、そこんとこまるっきり無かったことにしてますけど!単なるアクロイドさんの殺人事件になってますけど!題名的にはあってるけどね!

原作はシェパード医者による一人称で、村で起こった殺人事件に隣に越してきた妙ちくりんな名探偵が挑む様を書き記す、という体で書かれています。これまでだったらヘイスティングズがその役割だったわけですが、ポワロも引退してるしヘイスティングスもアルゼンチンに移住してしまったから、その替わりにこの医者がその役をするのね…と見せかけての、実は「語り手本人が犯人だった」をやるためのこの配役。この本自体が、ホームズでいうワトソンとか、原作のヘイスティングズが書いてるような事件解決記録に見せかけて、実は犯人による手記だった、というわけです。そりゃヘイスティングズにやらせるわけにはいかないわな。というかヘイスティングズじゃ殺人自体も成功しないか、あっという間に自白しそうだわ。

 ⇒関連エントリー:【本】『アクロイド殺し』(アクロイド殺人事件)―お恨み申し上げます、早川様(アガサ・クリスティ著・ポアロ物)

これ、ドラマしか見てない人は、なんで『アクロイド殺し』がこんなに有名な話か全然わかんないよね。「嗚呼、ロジャア・アクロイドが医者に殺されてしまつてゐるね」そんな話になってるよね。語り手本人が犯人という話はアクロイドが最初ではなかったようですが、有名さでは『アクロイド殺し』が一番?そこんとこ良く知らないけど…。とにかくこの話の魅力は語り手、つまり「わたし」が犯人だった、ここに尽きます。ここがないアクロイドなんてアクロイドじゃない~。アクロイドとしてのアイデンティティはどこに置いてきてしまったんだ!アクロイドさん殺しておけばOK~じゃな~い!

ドラマ版は何でこんな話にしたんだろ。もう有名で犯人知られてるから?だったら事件を取り巻く人間模様をもっと丁寧に描くとか、他に見せ場を作ってくれたらいいのに…。ちなみに動機もちょっと変わっていて、ドラマでは悪人の金持ちを罰する系の動機(というか言い訳)になっていますが、原作では、ごく平凡な男がお金に目がくらんで強請をするうちに次第に金に対する欲望がふくらみやりすぎた結果のこれ、という流れです。この辺も原作の方が面白い。

ということでかなり腑抜けになりながらドラマ鑑賞。話については、もうあまり書くこともありません。原作ポアロは初期の頃は引退する引退する引退したと引退詐欺を繰り返していたのに、ドラマシリーズでは全然引退云々言わないので、引退はなかったことにするのかと思いましたが、ちょうどこのSeries 7が前作から3年のブランクを開けて始まったのに合わせてうまいこと持ってきました。ちょっと前に『ゴルフ場殺人事件』もあってヘイスティングズも奥さんと移住の流れができてるし、ポワロ一人で田舎に引っ込んでる今作を持って来る絶好のチャンスは、ここしかなかったんではないでしょうか。

リアルタイムで見ている時はあまりわかりませんでしたが、改めて見るとスーシェの顔も段々老けてきました。村に来て1年と言っていたので、引退して1年は少なくとも立っているようです。ドラマではかぼちゃではなく冬瓜をせっせと育ててる。そして期待に応えてくれない彼らに癇癪起こしてとりゃ!と罰を与えるシーンはしっかり再現してくれてよかった。しかし冬瓜を投げる時の声がどうしてもオネエ系に聞こえてしょうがないわw その後の上目遣いの「いけない」まで、もう完璧。

今作は妙齢のおじさんが多くてどうにも登場人物の見分けがつきません。アクロイド死体発見時シーンなんて、部屋にいる人がことごとくおでこが丸くお禿げになった人しかいない。死体のアクロイド越しのシェパード医師からのパーカー執事と、3連続攻撃。そうか、こういう話だから頭髪に多感なお年頃のヘイスティングズは出てこなかったんだ!、とこれを書くのは『チョコレートの箱』に続き2回目。

ちなみに、wikiによるとミス・マープルの原型となった登場人物と言われていたシェパード医師の姉は、ドラマだと妹になって、性格も大分変わって登場。個人的に原作からしてどこがミス・マープルの原型なんだかあまりわかりませんでしたが、ドラマ版だとミス・マープルのかけらもありませんね、いや、盗み聞きが好きなところは似てたか。逃がそうとしてピストルを渡したら自殺されてしまったとか切ない。まぁそうなるよな…。ちなみに原作では、ポアロは善良なお姉さんを気遣って、もう一つの逃げ道をとる機会を提供しようと、シェパード医師を一人で残します。つまり内密に処理して姉には知らせないから、あとは自分で死ね、と。怖いですね~。

そんな具合で、ドラマ版に関してはもう感想も何もないよ。この話はあまり見返さないだろうな…。

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