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【ドラマ】名探偵ポワロ『エッジウェア卿の死』 ―私のクラドック警部が…!

『エッジウェア卿の死』

のーーーーん!私のクラドック警部が、変態エッジウェア卿だなんて…!あんまりだわモナミ!と衝撃の幕開けだった『エッジウェア卿の死』ですがしかし面白かった!原作の中で一番お気に入りポイントだったジェーン・ウィルキンソンの人物像が全然違うことになっていましたがだがしかし面白かった!

エッジウェア卿を演じているのは、同じくアガサ・クリスティ作品のドラマ、ジョーン・ヒクソン版「ミス・マープル」シリーズでクラドック警部を演じたジョン・キャッスルという俳優さん。私は女優さんに比べると俳優の顔面にはほとんど興味がないのですが、落ち着いた物腰でたまに見せるニヤッと笑いがとてもイケメンなので、貫禄あるおじさまイケメンを見たい人はぜひミス・マープルの『予告殺人』(『鏡は横にひび割れて』にもちょっと出てます)を見てみてください。まぁ全然原作のクラドック警部のイメージとは違うんだけどね!原作のクラドック警部はもっと若くて落ち着いて切れ者な、いかにも出世しそうな有能イケメンなので、若いイケメンを読みたい人はぜひ原作の『予告殺人』、短編の「教会で死んだ男」、『パディントン発4時50分』、そして『鏡は横にひび割れて』を読んでみてください。

 ⇒関連エントリー:【ドラマ】ミス・マープル『予告殺人』―名作の完全映像化、そしてイケメンクラドック警部





さて、私のクラドック警部の宣伝も終わったところで、あらすじはNHKオンラインより―

美人女優の別居中の夫が殺される。離婚交渉中だった妻にはアリバイがあったが…?

ポワロはアルゼンチンから帰国したヘイスティングスと、あるショーに出向いたところ、そこに来ていた女優のジェーンから別居中の夫との離婚交渉を依頼される。夫のエッジウェア卿は離婚を拒否していた。ポワロはエッジウェア卿のもとに向かうが、彼はすでに離婚に同意した手紙を妻あてに送ったという。だがジェーンはその手紙を受け取っていなかった。その後、エッジウェア卿が刺殺体で発見される。

荘厳なエッジウェア邸に晩餐会会場、綺麗な女優さんに女性陣のファッション、帽子屋・貴金属店のアーケード、建物から小物に至るまでクラシックで華やかで、もう見ていて幸せな物ばかり。ステンドグラスのある家なんて住んでみたい。話も、レギュラー陣4人が久しぶりに終結、でジャップ警部がフラグを立てーの、そこからの連続殺人がおこりーのと2時間があっという間。後半にはポワロによるヒントタイムで、推理の上での5つの疑問を丁寧にあげてくれていて親切なつくりだわ。推理物を見ていて、たまには解決編を見る前に頑張って推理してみるかと思ったりもするのですが、どこがすべてヒントが出来切った場所かわからずどこで最後にもう一度考えるべきか悩ましかったりするので。もうちょっと…と先延ばししてると突然犯人言われちゃったりねw あの5つのヒントで、鋭い人はわかるのかな?

「鼻眼鏡は何のため、そして誰のものか」
「いいとこついてますね…!」


ちょっと黙ってヘイスティングス。

「一つ目の疑問は何でしたっけ?」

黙れ。


⇒原作感想はこちら:【本】『エッジウェア卿殺人事件』(エッジウェア卿の死) ―女たるもの喪服のフィッティングもしなければ…!
アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタバレあり

マダムタッソーの蝋人形館 アムステルダム


この話の肝は犯人のアリバイを物まね女優によって作るというもので、その女優が登場してオッス!おらカーロッタだった時点ではこれはもうダメだ…!と思ったものでした。もうサイヤ人しか頭に浮かんでこないし。原作読んだ時私はもともと1・2回会ったぐらいでは人の顔を覚えられないので、この晩餐会に出席しても100%騙される自信がありましたが、実際に映像で見るとどうなんだろうと楽しみのような心配のような感じでドラマを見ており。そして予想外に、思ったより似ていました。さすが女優。2人並ぶとそうでもないですけど、最初私はこのドラマを通してではなく飛ばし飛ばし見ていて、ふっと見た時カーロッタが演じている場面だったのですが、どっちが演じているのかわかりませんでした。そしてジェーンのバンデューセン夫人への変装も良かった。

クリスティ作品には、読んでいて(見ていて)これ絶対無理だろ…と思うトリックが結構あり、よくあるパターンがやたらそこらへんの俳優・女優が別人になりすますものです。俳優だからといって台本なく筋の破たんもないアリバイ作りができるとは思えず、これが出てくるとまたかとげんなりします。クリスティで芸能関係者がでたら取りあえず疑っておいて間違いない。でもこの『エッジウェア卿の死』に関しては、例外的にアリかな~と思う。晩餐会に出ている出席者はほとんど顔を知らない人だった、ということ、そしてドラマでは結構明るく映ってしまっていましたが、晩餐会会場は蝋燭の炎のみで薄暗いという設定だったこと。何より、2人の実力派女優が自分の実力をかけて演じる、というのが夢がある(と言っていいのかw)。これは成功して欲しいな~と思ってしまうわ、もちろん殺人抜きにして。それにダメそうなら電話で教えるという予防線も張ってあることだし、このトリックは成功するんじゃないかな~。

冒頭にも言いましたが、ドラマ版はジェーンの性格がだいぶ変わっています。ドラマだと女優さんの端正な顔のせいかなんとなく頭良さそうに見えなくもないですが、原作ではジェーン・ウィルキンソンのおつむの軽さがもっと強調されており。だからパリスの審判をパリと間違えるし、そうだ!物まねでアリバイつくっちゃえばいいんだ!とかアホな犯行方法思いつく。そうだ!先に夫殺すって宣言しておこう、そんで屋敷ついたら名乗りあげてサクッと殺しちゃおう!犯人だったらそんなことしないし!ついでにイニシャルに適当にDって掘っておこう、誰か知らんけどウシシ!と徹頭徹尾明るくおバカな犯人にコケにされまくった原作。夫が死んだと聞いたらとりあえず失神して殺された妻の役割を楽しんだ後は抜け目なく弁護士を呼び、そして殺してほっとした後はもう事件の事はどうとやらで、浮き浮きと喪服のフィッティングにいそしむ。子どもっぽく無邪気でこずるい殺人犯はとても印象的です。原作感想でも書きましたが、とても好きな犯人。

ドラマ版は悪女度が増して怖さも増してはいますが犯人としてはちょっと凡庸になってしまった感があり、これは原作の人物像の方が断然好きです。でもカーロッタが自分にうまく変装しているのを見て嬉しそうに笑っていたシーンは可愛らしくて良かった。ピンクサテンの服に手袋、狐のショールも素敵だったし、赤い服も似合っていた。ドラマ版のジェーンも好きです。ポワロがちょっと惚れそうなのもわかるw

ドラマ版ジェーンはポワロにも色仕掛けをしかけていますが、原作のポアロはジェーンに特段思い入れはないし妻に毒殺される夫を沢山見ているから結婚せず独身なのは幸運だと思ってるぐらい。ドラマ版だと、なんか物的証拠や人の証言に惑わされず人間性を見抜いて推理するのが得意とは思えない純情っぷり。そしておでこにチューされてすごい喜んでいた。

変わったと言えば私のエッジウェア卿、ちがった変態エッジウェア卿も、サディストの人格破綻者な描写は全く省かれ、妻に嫉妬するただの独占欲の強い男に。これなら私のクラドック警部が演じてもまあいい。しかしあのダンディなクラドック警部を演じた人とは思えない、憎たらしいエッジウェア卿でした。俳優ってすごい。今作の女優・俳優陣は当たりだな~。

ドラマで最後犯人がいっていた独白は、原作では手紙です。「刑務所に入れられて顔色青白くなってるけど、なぜか私にはそれがとっても似合うのですウフフ絞首刑が公開されないのは残念、P.S 私マダムタッソーに陳列されるとお思いになる?」な、かなりいっちゃってる手紙もジェーンらしくてすごく気に入っているので、ドラマから入った人もぜひ原作読んでみてください。ちなみに上の写真は、オランダ行った時に撮ったマダムタッソーの蝋人形館分館。この話を思い出して入りたかったけど、時間が無くて入れませんでした。まぁ日本にもあるんですが。ポワロを見ていると無性にヨーロッパに行きたくなりますね。


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