旅行鞄にクリスティ

海外旅行とアガサ・クリスティのブログ 最近はコスメ・ファッション・マイリトルボックスレビューに侵食されぎみ


【ドラマ】名探偵ポワロ『ホロー荘の殺人』 ―皆ちょっとずついい人になってる ※ただしジョンを除く


『ホロー荘の殺人』

ヘンリエッタが美人~!!今まで出てきた女優さんの中で1・2を争う美人さんではないだろうか。あんなオーバーオールなんて色気のかけらもない酷い恰好をしているというのに、あの魔性度。ジョンもあんなデレデレ嬉しそうに包帯巻かれて、ほんとはわざと転んだんじゃなかろうな?そんなジョンを演じるのはジョナサン・ケイク、ミス・マープルの「蒼ざめた馬」 に出てた人だ~…なんて見てたら、マープルさん来たー!いや、来なかった、声だけ来たー!ふりふり妖精おばあちゃんルーシーさん(御年60超)の声が、グラナダ版の2代目ミス・マープルの吹き替えをした藤田 弓子さんでした。

あらすじはNHKオンラインより引用―

PLST 公式通販サイト

田舎のホロー荘で起きた殺人事件。背景には、一族の複雑な人間関係があった。

週末、田舎のコテージで過ごしていたポワロは、近くのホロー荘の主人サー・ヘンリー夫妻から招待を受ける。屋敷には夫人の実家の相続人エドワードや彫刻家のヘンリエッタ、医師のジョン夫妻など親族たちが集まっていた。翌日、ポワロがランチに出向くと、血を流して倒れているジョン、銃を手にしたジョンの妻ガーダ、そして、2人の周りをホロー荘の人々が囲んでいる姿を目の当たりにする。

本で読んだ時はルーシーはあまりにつかみどころがなくていまいち理解できませんでしたが、ドラマで見るとすこし魅力も怖さも分かったかも。ガータもなんか原作より共感できる感じになっていました。知能の面も原作よりはましになりちょっとどんくさい人程度になって、ガーダが周りをイライラさせるというよりジョンが勝手にイライラしている風になっていたし、実際の夫の姿を見ようとせず自分に都合のいい人物に祭り上げて崇拝する、弱い人を装った押しつけがましさがかなり減ってすごくまともな人に見え。ガータ役の人も雰囲気があったし、ミッジの顔もファニー系ですが好きな顔で、そしてルーシー役の女優さんの若い時を調べたらかなり可愛かった。今作は美人揃い。なんかここ数話から女優さんの顔面偏差値が上がっている。

⇒原作感想はこちら:【本】『ホロー荘の殺人』(アガサ・クリスティ/ポアロ) ―主に登場人物達の嫌な所に共感する話
アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタバレあり

シャンティイ


原作のガーダは、自分がジョンにどう思われるかしか考えていなくて周りの人の気持ちを(ジョンのすらも)考えようともせず。自分が出来ないからといって周りに嫌なこと・大変なことを押し付けることに何の罪悪感も感じない人なので、不快な人ばかりの登場人物の中でも、ダントツで知り合いにいて欲しくない人物でしたが、ドラマではミッジの次にまとも…?ぐらいになっていました。

でもそのせいでなんかひたすらガーダが可哀想な話になってしまいました。犯人が可哀想だとなんか報われなさ過ぎなので、嫌な人のままでいて欲しかったような気も。ちなみにラストはドラマでは自殺していましたが、原作では罪がバレたのにビビッて、自分を助けようとしたヘンリエッタを毒で殺そうとするクズっぷり、そんでそこに現れたポワロにサッとすり替えられた毒入りカップを自分で飲んで死んでしまうドンくさぶり。そしてヘンリエッタも一人になって泣いた後、なんかもぞもぞと居心地の悪い気分になって、「ごめんね、ジョン、こうせずにはいられないの」とか言っておもむろに ”嘆き” の石膏像創り出しますからね。なかなかすごい話だよね。

なんかドラマ版は、話の筋は違わないのに、別の話か?!と思うぐらい印象の違う話になっている。見ていても自分の中のドロッとしたものの出てこない、かなり見やすくそしてどことなく幻想的な雰囲気の綺麗な話に。ガータに限らず、内側に厭世的な空虚さをかかえつつ表面上は普通に過ごしている登場人物それぞれの内面がドラマではあまり描かれない為、原作よりも皆ちょっとずつ良い人に見え、良くも悪くもこの話の味である後味の悪さ・不快感は減ってしまったかも。本当はわざわざ自分の不快な部分を人前にさらしたりしないので、原作に出てくる人も実際にみるとドラマ版ぐらいの不快さなんでしょうね。

そんな中で唯一クズ度が増していたのが、ジョン。ヘンリエッタの「高潔な人」という評には思わずそりゃないないと言ってしまいそうなぐらいの好色っぷり。なんかあっちこっちにフラフラ手を出していましたが、一応原作では、15年前に熱烈に愛したヴェロニカ、医師の仕事を捨てて自分と一緒にアメリカに来るよう迫った女優を身を切る思いで諦め、その反動で地味で自分の意見を持たないガーダと結婚したもののやはり結婚生活に満足はいかずいろんな女性と関係しつづけていたが、この日ヴェロニカと再会し一夜を共にしたことで15年間のしこりに決着がつき、ガータにもっと優しくしもっといい夫婦になろうと思いなおしたところで射殺されています。そしてジョンが一番心に止めていた女性は、ヘンリエッタでもガーダでもヴェロニカでもなく、医師として全霊を傾けたリッジウェイ病の治療法の解明にタッグを組んで取り組んだ、貧民街の患者 クラブトリー婆さんです。なんというか、お前は結婚しないで仕事だけしてろ、そう言いたくなる人物。

そういえばガーダをミッジの次にまとも…?と書いたけど、ドラマではミッジ完全に空気だったw なんだろう、私のお気に入りの登場人物は、ドラマでは省かれることが多いわ。やはり端役でもしっかり内面エピソードの描かれる人物を好きになりがちなので、それをドラマでやると尺が足りなくなってしまうんでしょうかね。父親の代で没落し労働者として生きるミッジはフワフワと漂うように生きるアンカテル一族に馴染めず、援助を拒み、不平を言いながらもお金のために嫌な店主、嫌な客に頭を下げる毎日を送る、とても普通の人。何も成し遂げることができずただ遺産で暮らすだけのエドワードが自殺を企てミッジが助けるエピソードも、まるっと省略。ドラマだとなんかヘンリエッタに振られたからミッジで手を打った感が増してて、ミッジも仕事辞めたいからエドワードに飛びついたみたいな感じだったかもたけど、原作だとそれなりに二人のエピソードもしっかりあります。ヘンリエッタやジョンのような際立った才能を持たない凡人2人の話には、いろいろ共感できる部分があり。

ドラマではヘンリエッタ&ルーシー VS ポアロ が前面にだされたアレンジ。前の晩にポワロが招かれた時のヘンリエッタの「あなたの方が犯人より賢いってことね。もしあなたより利口な犯人と出くわしたらどうなります?」の会話を受けての、ドラマ終盤での「あなたは私より利口ですか?」というポワロのセリフ。これは両方ともドラマオリジナルですが、切れ者同士の頭脳対決という緊張感があってすごく良かったですね~。そして最後ルーシーがヘンリエッタの寝室に押し入りホルスターのことを知らせてヘンリエッタが飛び起きる、お互い相手の意図を理解し何も言わずとも協力して真犯人を守っていた二人が面と向かって共謀したシーンからの放心したような表情の綺麗なガーダ、という真相がわかる緊迫した一連の流れがとても好きです。犯人知ってるのに。

原作は人間や人生の嫌なところをホレホレと出される後味の悪さが心に残る、印象的ですがそんなしょっちゅう読み返しはしたくはない話でしたが、ドラマはそれとは全く違った幻想的な哀しさのある話。どちらかというとドラマ版の方が好きかも。今週も面白かった。

そうそう、余談ですがサー・ヘンリーは「シャーロック・ホームズの冒険」のドクター・ワトソンでしたね。



関連記事

 名探偵ポワロ,