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【本】『マギンティ夫人は死んだ』(アガサ・クリスティ/ポアロ)―日本でいう与作が木を切っている的話


『マギンティ夫人は死んだ』☆☆☆★★

これは特につまらないというわけでないものの何故かそんなに何度も読み返していはいなかったので、犯人を覚えているような忘れているような他の話と混ざっているような…なので久々に初読時のような脳みそ引きずられ感と謎解きを楽しみながら読む。よ~し、片っ端から疑ってっちゃうぞ!

あらすじはウィキペディアより引用―

掃除婦としていくつかの家で働いていたマギンティ夫人が何者かに殺された。そして、彼女の家の間借人だった男が逮捕されるのだが、スペンス警視は彼が無実だと確信し、ポアロに捜査を依頼した。あらゆる証拠が彼を指している中、ポアロは真犯人を見つけられるのか。

オリヴァ夫人とスペンス警部登場。どちらも好きなので嬉しいです。あちらには ”マギンティ夫人は死んだ” という童謡があるようで、見たて殺人というわけではないですがその通りマギンティ夫人が死んじゃったよ、というお話。日本人には馴染みがないのでフーンという感じですが、あちらの人からしたら、日本で言う”本当に与作が木を切ってるよ!”的な面白味のある題名なのかもしれないですね。この歌、マザーグースなのかと思っていましたが、ネットで調べてみた限りだとどうもマザーグースではないのかな?

チャーミングで明るくて散らかし魔で料理が壊滅的なモーリンがこの話の癒しポイント。どうかモーリンが犯人ではありませんように…!と祈りながら読み進める話。そしてそれに痛めつけられるポアロを愛でる話。例えによく出てくる、泥水みたいなコーヒーって一体どんなんだ?

⇒ドラマ版感想はこちら:【ドラマ】名探偵ポワロ『マギンティ夫人は死んだ』 ―ミス・マープルシリーズみたいな映像
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日比谷花壇_お正月特集_2016

以下ネタばれあり

シャンティイ城


モーリンが犯人のはずがない、絶対ないし…!と思いながら終盤引き出しから出てきた写真辺りでだいぶ雲行きが怪しくなって、いや~ そんな馬鹿な…!とまぁ非常に作者の手の平でゴロンゴロン転がされ。マギンティ夫人を殺したのは誰なの?この村に本当に昔の殺人鬼が潜んでいるの?と割と最初から最後まで一気読みでした。

ただ何となく緊迫感がないのは、冤罪の男性があまりにゆる~い感じだったからかも。もう何もかも諦めて虚脱している、というのではなくて、なんかぽけ~っとしているのよね。ポアロにはどうせ真犯人捕まえるなんて無理なんでしょ、的態度をとりながら、モードについて聞かれるとちょっと服装が好みじゃないとかデアドリーの話をする時はポッと赤くなるやら、あなた死にそうなのにそんな女の子えり好みする話なんかして…。

最後はあっさりというか、話の面白味から期待したほどの盛り上がりに欠けるというか。なんだろう、”まさかモーリンが犯人…?!善良な下宿屋の夫婦に見えたのに、ポアロさん泊まっちゃってるのに…と思ったら本当は犯人は女じゃない、あんな地味な夫ジョンの方だった…!”と直前に掛けられたフェイントの方が割とインパクト大きくて、結局ロビンでした、となると ”あ、そうなんだ、何だお前か…” みたいな。もうね、動機も機会も何にもロクに推理できてないから、つい意外性というインパクトのみで評価しちゃう。

それにしても、外国人の名前はわからん。イヴリンは男性名でもあるんだ、ちょっとこれは日本人には難しいわ。親が殺人犯だというのを隠して暮らしていたのに興味本位で暴かれるというのは可哀想な気もします。大昔の、しかも自分じゃない罪のために。しかしまあ隠すだけでなく悲劇の母親をでっち上げてパトロン捕まえる餌にするとかしてたので自業自得か。しかもバレそうになったら殺して遺産がっぽり、しかも他の人に罪を擦り付けようとするとか。まっとうに地味に暮らしていればよかったのに。

ロビンの嘘がばれた後にも関わらず、劇場に行く前、殺す直前のローラとロビンの会話があまりに仲睦まじいのがなんかちょっと不自然な気が。さんざん苦労話をきかされて囲ってやり義理の息子にもしてやった男が、実は身の上話は嘘八百で殺人者の息子だった、その上ローラはどんな気質も遺伝すると信じていて環境<遺伝的な考えの持ち主だった。それなのにあの場面のあの和やかさはないよな~と思ってしまう。速攻で叩き出すか少なくとも冷戦状態程度のギスギス感になっていそうなのに。

そんな感じで明かされた実際の犯人と犯行に関しては、名前からくる性別の思い込み、という点を除いては正直そこまで面白くもなく。意外とあっさり解決したな…と思った最後のおまけでポロポロと見えてきた村の人たちの、事件とは直接関係のない裏の様相が怖いですね。特にリード医師、奥さんを殺そうとしているの…?奥さんを殺そうとする旦那を見抜く話は、ミス・マープルの『火曜クラブ』の「クリスマスの悲劇」を思い出させます。あちらは失敗して奥さんは殺されてしまいましたが、さてスペンス警部は犯行を阻止できるかな?特に続編は書かれたりはしないけど、その先にまた別の物語が続くのを匂わせるような終わり方は、クリスティには珍しい気がする。人には裏の顔があって、そこらへんに火種は潜んでいるんだ、そのまま今日も村の生活は続いていくんだ、そう思うお話。


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