トラベルライターmugiの「旅行鞄にクリスティ」

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【ドラマ】『オリエント急行の殺人』、そしてドラマ「名探偵ポワロ」シリーズ全体の感想

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『オリエント急行の殺人』『(オリエント急行殺人事件)

さてさて、ドラマ『オリエント急行の殺人』の感想です。『オリエント急行の殺人』は原作も大好きで、しかし原作では一度も泣いたことはないけれども、ドラマはもうこれは見るたびに泣いてしまう。ちょうど本日『カーテン』の再放送をしていますが、『カーテン』の方ではロクな感想を書かなかったので、そちらも含めてドラマ全体的な感想も書いていきたいと思います。なので『カーテン』も含めたその他もろもろのポワロシリーズのネタバレあり、未読・未視聴の方は(特に『カーテン』の筋を知らない人は)絶対にお読みになる事のないよう…。未読のかたはこちらの記事に回れ右して、オリエント急行でティータイムしてきた記事をお楽しみ下さい。

オリエント急行でティータイムしてきました@箱根ラリック美術館LE TRAIN(ル・トラン) - エルキュール・ポアロ(ポワロ)

いつかオリエント急行にのって旅がしたい、というのは多くのアガサ・クリスティファンの夢見ることでありましょう。本物のオリエント急行は残念ながら運行を終えてしまったようですが、その復元バージョンでいいので、それに乗ってヨーロッパを横断したい…。しかししかしそこは「レールの宮殿」「列車の貴婦人」と称された豪華寝台列車、お値段もそりゃもう豪華なもので夢のまた夢。宿泊なんて贅沢なことは言わないから、ほんのち...


さて、ではとりあえず『オリエント急行の殺人』のあらすじはNHKオンラインより引用―

ポワロはオリエント急行に乗車。列車には国籍も階級もさまざまな人々が乗っていた。乗車して3日目の朝、アメリカの富豪が刺殺体で見つかる。

パレスチナで事件を解決したポワロは、イギリスに戻るためオリエント急行に乗車。列車にはアメリカの富豪ラチェットをはじめ、国籍も階級もさまざまな人々が乗っていた。乗車して2日目、ポワロは「殺されるかもしれない」というラチェットからの保護の依頼を断る。彼の態度に反感を抱いたからだ。その翌朝、ラチェットが刺殺体で見つかる。


⇒原作感想はこちら:【本】『オリエント急行の殺人』(アガサ・クリスティ/ポアロ)-探偵側で、犯人側で
アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒念願のオリエント急行でティータイム@箱根ラリック美術館


以下ネタバレあり

サント・シャペル



原作と大筋は変わりませんが、雰囲気はがらりと変わっています。ソニア(デイジー・アームストロングの母親)に忠実だった探偵事務所のぼくちゃん、原作ではいまいち居る意味が分からなかったハードマン君は登場せず、その替わりに医者がグルに。ラストもあっさりと犯人たちを見逃し ”はいこれにてお開き” と終わった原作とは大違いで、もうそこからが本番ぐらいのシナリオでした。特に雪の中ぐっとこらえてロザリオを手に歩くポワロさんのシーンは、何回見ても泣いてしまいます。最初のオリエント急行に乗るまでの所も完全ドラマオリジナル。原作には全くない、罪に問うた人の自殺や、イスタンブールでの女性に対する投石リンチが加わり、よりテーマ性の深い話に。

原作ではどちらかというと、法で裁けない者にも必ず裁きは訪れるという論調メインに人が人を裁くというテーマが付け加わった形。私刑の是非を、法では裁けない極悪人カセティを見逃すか私刑で殺すか、犯人たちはどうすべきだったのかという形で問題提起してくる話になっていたのに対し、ドラマ版では法においては裁かれるべきこの”善良なる”殺人犯達を、見逃すか死刑に送り込むか、正義とはなんだ、というポワロ視点をより意識した作りになっています。

途中までの、登場人物達が原作や映画版に比べて普通すぎ、小物過ぎて個性がないという不満は、犯行がバレたあたりのシーンからもうどこへやら。意識のあるまま刺していく残忍さと犯人たちの覚悟(原作ではカセッティは意識なしです)、その横で臨終の祈りを唱えるように呪りの言葉を語り掛けるドラゴミロフ公爵夫人の姿になんでだか涙し、それなのに声高に正しいことをしたという言葉に傲慢さと嫌悪感も感じ。犯人目線での感想や私刑に関してはもう原作の感想の方で長々書いているので省略し、ここでは名探偵ポワロシリーズとしての感想に留めますが、原作よりぐっと暗く重くなった筋書き、これについては映画版も含めて人それぞれいろんな思いがあると思いますが個人的には最終話『カーテン』を見据えた、25年続いたドラマのラストへの収束という形になっていてとても良かったと思っています。

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初期の方に発表された原作版とは違って、ドラマはすぐそこに25年も続いたシリーズの終わりが見えているわけで、単独の話としてだけでなくて嫌でもドラマの終わりを意識したつくりになる。ここであっさり犯人見逃して正義の裁きですめでたしめでたししときながら、『カーテン』で人を裁いて殺して自分も自殺(厳密にはちがいますが)では支離滅裂すぎるわけで。

それに加えて、原作の中には軽くハートウォーミングでカップル大量発生な頭に花咲いているような話もありますが、後味の悪い話〇選みたいなのでもクリスティは常連だったりするように後半に執筆されたものは結構ドロッとした鬱々とした話も多い。『カーテン』の筋がああいうものである以上シリーズとしてハッピーエンドは無く。なのでいつかはポワロさんとゆかいな仲間達路線から暗く重い話に方向転換しなくてはならず、第9シリーズあたりからの雰囲気の変化は、制作会社云々がなくても私は有りだと思っているし、その象徴的な作品としてこの代表作の『オリエント急行の殺人』を持ってきたのはすごく良かったと感じています。

後期のドラマの暗さについてもいろいろ言われますが、あの仲良しほのぼの路線のまま、ラスト殺人を犯して自殺みたいなので終わるとか、ヘイスティングズもミス・レモンもジャップ警部も浮かばれないし(死んでない)何より私の心がもたないわ。だってドラマのポアロさんは愛らしいんだもの。

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原作のポアロは、初期ドラマの愛らしい小太りの妖精さんのようなポワロさんと比べると、もうちょっと鼻持ちならなくてかんしゃくもちで扱いづらい人物像です。老いが強調される原作後期は憂いも追加になるので、ドラマ後期と近いと思う。私も感想書きながら、自然と原作ではポアロと呼び捨てで、ドラマ版の感想ではポワロさんとさん付けになっており。途中で気が付いてどちらかに統一しようとしたのですが、なんか上手く行かず。原作もドラマもどちらのポアロ像も好きですが、原作版の方が一歩引いて見れるというか。なので原作でカーテンを読んだ時は、ポアロが死んだことに関して悲しみとかはなくて、どっちかというとそれよりもあまりのネタにポアロがついに一線を越えてやっちまった、アガサ・クリスティやりやがった!的な衝撃の方が大きかったです。書き手が犯人だった、あるいは容疑者全員が犯人だった、警察が犯人だった、等これまで度肝を抜く犯人を設定してきたクリスティが、ポアロ最終作に「探偵が犯人だった」を持ってきましたよなんてこったい、みたいな。こんなのをシリーズ中ばに書き上げ最終話はこれ、と決めつつ何十年もずっとポアロシリーズを書いていたなんて、なんてひどい作者なんだ、そしてなんてクリスティらしい。ミス・マープルとの扱いの差に泣けるわ。

そんな感じで悲しみよりもショッキングという印象だった原作カーテンですが、これをドラマの愛しいポワロさんでやられたら泣いてしまいます、本当に。シリアスに転んでからの流れでの『カーテン』でも、あの話はもうほんと嫌でした。死んでしまうシーンはほんと見たくない。それがもしずっとヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップ警部と仲良しほんわかの初期設定のままいきなりどーんと『カーテン』に突入されていたら、もうショックがでかすぎる。『カーテン』へ向けてのポワロさんの思想的な面でも、そして私の精神衛生上の問題でもどこかでシリアス方面に方向転換しなければならずw そしてこの『オリエント』→『ヘラクレス』→『カーテン』の流れは非常に納得できました。もうね、第9シリーズで良い長編全部もってっちゃって搾りカスみたいな長編しか残っていない中で、よくこんだけドラマシリーズ全体として見ごたえある話にまとめたよね。

そんな感じで昨年AXNミステリーでやっていたベストエピソード投票みたいのでは、私は『オリエント急行の殺人』に投票しました。ちなみに、ミス・マープルシリーズでは、確か『鏡は横にひび割れて』に投票したと思う。そして賞品の英国スタイル ピクニックバスケットを狙っていたのに、そういえば外れたのね、無念。これ持って英国お貴族様ごっこしようと妄想していたのに。ちなみにマスターマン役のヒュー・ボネヴィルは『鏡は横にひび割れて』にもヒューイット警部役で出ています。原作が実際にあったリンドバーグ事件の犯人への怒りでこの話を書いたということであるならば、きっとこのドラマはアガサ・クリスティの意図したところとは違うのでしょう。でもまぁ原作通りが見たかったら映画見ればいいし、という身もふたもない感想もあり。

私は短編の温かい雰囲気も長編の重さも好きだし、愉しい話も怖い話も、美しい自然も重厚なアンティークも、好きなものがぎゅっと詰まったこの「名探偵ポワロ」は大好きでしたね。これからも繰り返し繰り返し見ていくと思います(カーテン以外)。しかし放送が終わると(水曜に再放送していますが)だいぶさみしいですね。刑事フォイルもチラッと見ているのですが、途中からなのでいまいち良くわからない。今度再放送始まるらしいからしっかり見てみるか。

そういえば、映画版と言えば、『オリエント急行殺人事件』がまた映画になりますね。ジョニー・デップが出演するとか…、しかもラチェット役とか…!


合ってる、悪人顔だし!これまで何度か、「名探偵ポワロ」シリーズに出てくるナヨッとした男をジョニデに例えてきたので、なんか感慨深いものがあります。ちなみに私はジョニデの悪口しか書いていない気もしますが、友人のお母様がジョニデに握手してもらったというのを聞いてキ~ッとなるぐらいにはジョニデは好きです。また映画の続報で、ヒルデガード・シュミットかグレタ・オルソンがペネロペ・クルスとかなんとかもあるようで。なんか想像できないけど、すごい楽しみ!

さて、本日の『カーテン』で土曜の再放送は終了する上に、最終シリーズについては本放送時に既に感想を書き終わっているので、『名探偵ポワロ』の再放送に合わせてこのブログに来られる方は今回で最後になる方もいるかと思います。今まで読んでくださってありがとうございました。土日のブログのアクセス数・検索数は群を抜いて多く、また拍手やコメントを頂いたりと、とても励みになっていました。長編になった後半はなかなか原作とドラマの感想2本立てが厳しく、抜けている話もまだまだありますが、こちらや昨年のトミー&タペンスや『そして誰もいなくなった』は、またゆっくりと上げていきたいと思っています。

それに加えて、このブログでは相変わらずコスメや旅行など、ちょっと非日常世界にトリップできるようなご褒美事をこんな感じで↓書き留めていくので―

沖縄備瀬Birth the suite バース宿泊記

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もし何かの折に思いだしたら、またブログを見に来てくださると嬉しいです。そして願わくば、また「名探偵ポワロ」シリーズ、もしくは「ミス・マープル」の再放送が始まって、新たなクリスティファンがずっと増え続けることを祈りつつ。


アガサ・クリスティ作品(名探偵ポワロ、ミス・マープル含む)感想一覧はこちら

『名探偵ポワロ』シーズン3


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