旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【ドラマ】『仄暗い鏡の中に』 ―鏡に映る心の闇(原作:アガサ・クリスティ)



『仄暗い鏡の中に』 
 
このドラマはイギリスで放送された「Agatha Christie Hour」という、ポアロ・マープル以外のクリスティの短編の中から映像化されたドラマの内の一つのようです。この『仄暗い鏡の中に』は、書籍で言うと『黄色いアイリス』に収録されている短編「ほの暗い鏡の中に」で、作者はアガサ・クリスティですが推理小説ではなく通常の小説です。

友人に、まるで幽霊の出そうな古い屋敷へ招待されたマシューは、晩餐のため着替えをしながら鏡を覗いていた。そこに映る、顔の左側に傷のある男に絞め殺される女の幻影。そしてその日行われた友人の妹シルビアの婚約パーティで、初めて彼女と対面し愕然とする。彼女はさっき鏡の中で殺されていた幻影の女であり、その婚約者には顔の左側に傷があったからだ。これは未来の幻を見たのか―?




以下ネタバレ

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結局あの日鏡の中で妻を殺していたのは、元婚約者ではなく自分だったというオチです。この辺は結構わかりやすい筋書き、というか隠そうともしていないのかも。

なんというか、嫉妬深い人間はいや~ね~という話です。結局のところ嫉妬深いというのは相手への愛が深いんじゃなくて、自分が大事で自分がかわいそうでかわいそうでしょうがないという自己愛が強すぎる部分が大きいので、マシューが愛を免罪符に奥さんを罵り、束縛することによって愛する人を自分の意のままに操ろうとする様子は見ていてとても醜くかった。束縛する人というのは結局のところ人も自分も不幸にしかできないので、奥さんも耐えないでもっと早く家を出てという感じでしたが、夫の元からの性格というより戦争の後遺症云々のせいなので耐えていたということのようです。戦争の後遺症云々のあたりは原作にはないドラマオリジナル設定かも。


鏡に映った自分の姿がかつての殺人鬼であることに気付き、自分の恐ろしさに気付いたマシュー、憑き物が落ちたように妻を他の男のもとに行かせ自分は身を引き、妻の本当の幸せを願ったところで一転、平穏が手に入ります。ここでやっとマシューの心の中でも戦争が終わる。目が覚めてよかったねめでたしめでたし、と終わりは結構あっさり。

このマシュー君、どっかで見たことあると思ったらニコラス・クレイという俳優さんで、同年(1982)の『地中海殺人事件』でパトリック・レッドファン役だった人でした。こちらは全然違う役回りで生き生きしとりますがw また、シルビア役はエマ・パイパーという女優さん。美人で見覚えがあるような気がしたのですが、特にほかの作品で見た記憶のあるものはなく…。『地中海殺人事件』の方は、話はそこまででもないですが女優陣のファッションとリゾートホテルのゴージャスさがでとても目に幸せな作品なので、機会があればぜひ見てみてください。

 ⇒関連エントリー:【映画】『地中海殺人事件』(アガサ・クリスティ原作) ―女達の華麗なる戦いとケンタッキーポアロ


私を愛し必要とする人の所へ行きます ――シルビア・アーミテージ

by カエレバ


 
       
 
         
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