旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【本】ミス・マープル『バートラム・ホテルにて』―古い時代をかたくなに守ったホテルの終焉(アガサ・クリスティ著)



『バートラム・ホテルにて』☆☆☆☆★

マープルを年代順に読み返すと決めた時に、楽しみにしていた話が2つあります。1つは5つ星付けた『パディントン発4時50分』、もうひとつはこれ『バートラム・ホテルにて』。どちらもお気に入りで数えられないほど読み返している話。でもこっちは星4つ、しかもおまけしてかな。ホントは星3つかも。なんで星5つじゃないかというと、ミステリーとしてはどうなの、小説としてはどうなの…とちょっとしっくりこない話のため。前にも書いような気もしますが、クリスティはこんな風にちょっと大がかりな話になると、荒唐無稽さが目立って読んでいてしらけてしまうというか。

 ⇒ヒクソン版ドラマ『バートラム・ホテルにて』感想はこちら
 ⇒マクイーワン版ドラマ『バートラム・ホテルにて』感想はこちら
 ⇒アガサ・クリスティ 作品・感想一覧はこちら

じゃなんでお気に入りかと言うと、なんと言っても古い時代の面影を残す…どころではなくかたくなに守っているバートラム・ホテルが魅力的な点、そしてミス・マープルの少女時代やイギリスのちょっと古い時代のノスタルジックな買い物風景が垣間見える点の2つからです。話の本筋関係ないw 旅行好きで古い物・アンティークが大好きな私にとってはバートラム・ホテルみたなホテルは大好物。こんなホテルがあったら泊ってみたい、いや、お茶だけでもいい。そういや作中で、バートラム・ホテルでお茶を楽しむ宿泊客達を見て”これぞイギリス”と喜ぶ外国人観光客に、”5時のお茶(ハイ・ティのこと?)なんてもうイギリスじゃやってねーよ”と突っ込むシーンがありましたが、このへんは日本人が、サムライ・ニンジャの扮装を見て喜ぶ外国人観光客に感じる微妙な気持ちに似ているんですかね。それでも、バートラム・ホテルみたいなホテルに行ったら、私は嬉々としてアフタヌーンティーしてしまうわ。

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ミス・マープルの買い物シーンはとても興味深いです。ミス・マープルの好みのリンネル・シーツやらガラス磨きの描写や、陸海軍ストアでの幼いマープルとヘレン叔母の買い物の思い出話等。なじみの店員と話しながら、じっくりと数カ月先のクリスマス・復活祭の準備をする、ボンネットをかぶった叔母様が目に見えるよう。

ところで陸海軍ストアってなんだ?食料品やらガラス器を売っているらしく、軍製品を扱うお店のようではないし。軍で遠征した先で仕入れた商品でも売っているんだろうか。ノスタルジックな描写に初読の時から憧れていて、今もあるなら行ってみたいお店の一つですが、今もあるのかな?軍人とその家族が行くお店とあるけれど、今でいう商社のファミリーセールみたいなもんなんだろうか。陸海軍ストア、検索しても出てこないし、適当に英語で検索しても軍製品のお店ばっか出てきてなんか違いそうだし、謎のお店です。

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今作は大おばさんの見本と言われているマープルのさらに上、ヘレン叔母やマープルの祖母の思い出話が良い味出しています。マープルの祖母がホテルへお茶に行って、「ここでボンネットなんかかぶっている女の人は私一人じゃありませんか!」と気付く話が面白い。いつの間にか時代は流れ、人生は”一方通行”で戻ることはできず、良い物も悪い物もいずれすべて古い物になる。



以下ネタばれあり



お気に入りのシーンは多々ありますが、肝心の事件は、うーん。事件は2つあって、大がかりな窃盗団の話と、エルヴァイラの出生をめぐる殺人ですが、窃盗団の方は正直納得できん。窃盗団には優秀な頭脳がいていろいろ企てているということだったけど、わざわざこんなホテル作る必要あるか?とか、著名人のそっくりさんや実際の車に似ているナンバーの車を走らせて捜査を混乱させるとあるけど、それそんなに混乱するか?とか、ペニファザー牧師そっくりさんは、人に見られてまずいならわざわざホテルから扮装して行かないで、現場近くで扮装すればよかったのに、とか、大がかりなことやってるけどなんかやってることの労力の割に効果がたいしてなさそうな気がするのですが。



正直事件はエルヴァイラの方だけで良かったなと思うのですが、それだとお気に入りのバートラム・ホテルがたいして意味のないことになってしまうので悩ましい。エルヴァイラの方は良いです。大人しく上品でウソつきで狡猾な、そうやって世の中を渡ってきた娘。後見人のところへ訪ねて財産状況を聞いて出てくシーン↓や、
とてもかわいらしい様子をして「どうもほんとにありがとう、大切なお仕事のじゃまをしてしまったんじゃないでしょうか」と出て行った。


母親が自分の罪をかぶって”自白”したのを聞かされた時に、「何か他に言いたいことはあるか」と質問され、黙ったあとに「いいえ、別にいいたいことはありません」と答えるのが印象的です。美しい外見を持った腐った魂、エルヴァイラのその後は描かれませんが、”芸術作品が壊される時は悲しいものです”と終焉を示唆されたバートラム・ホテルと同様の末路をたどるんだろうなと思わせるラストになっています。どちらも”スイカヅラがはびこってしまった花壇”で、すっかり掘り起こされとりのぞかれるしかない。エルヴァイラの逮捕は描かれないので、結末にもやっとする人もいるようですが、私はデイビー主任警部ならいずれ逮捕できるでしょうと根拠なく楽観視しているので、こういう余韻のある終わり方はかなり好きです。



人は過去へもどることも、過去へもどろうとしてもいけないこと― 人生の姿は前へ進むことだということ。ほんとに、人生って”一方通行”なんですね? ――ジェーン・マープル

by カエレバ


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