旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【本】【ドラマ】ミス・マープル『カリブ海の秘密』(アガサ・クリスティ著)感想



『カリブ海の秘密』 ☆☆★★★

※注 グラナダ版(マッケンジー版)ドラマの感想はこちら。 その他のドラマ感想はこのエントリー下部へ


10年以上前からずっとアガサ・クリスティの小説が大好きです。ポアロとマープルに関してはほぼ全部、その他他名義で書いたものも含めて大半は読んでいる。クリスティの小説は『オリエント急行の殺人』や『ナイルに死す』など、旅行物も多く、また大体筋を覚えているので途中でぶった切っても「続きが気になって旅行どころではない!」とはならないため、旅行のお供はいつもクリスティ。7月にコタキナバルの離島に泳ぎに行ったときは、離島のリゾートを舞台にした殺人事件『白昼の悪魔』を持って行きました。


ちなみに、私は推理小説好きですが、犯人はあまり推理したりせず(できないし)、そのまま「へ~」と読むタイプなので、推理小説としての良し悪しはよくわかりません。クリスティの小説は女性が、芯のある人も女のずるいおバカな部分を凝縮したような人も皆魅力的なところと(反対に男性はバカはただのバカっぽく書かれているような気も…)、調度品や料理や服などイギリスの昔の文化(お屋敷のクリスマスのごちそうやら、更紗のカーテンやら、モロッコ革の小箱やら、タフタのドレスやら)の描写が、好きで好きでたまらないw そういう部分を気に入って読んでいるので、話し全体の筋は二の次かも?

さてずっとクリスティが好きといっても波があり、最近再び波がやってきたので、読んだ端から感想を書いていこうと思います。まずはミス・マープルが探偵役の『カリブ海の秘密』。

カリブ海の秘密 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

マープルの長編ものとしては9冊目になるのでしょうか。年代順に読んでいないのでいまいち順番がわかりません。どれも1冊読みきりの推理小説なので特に年代順に読む必要はないのですが、一応マープルもポアロもゆっくりと年はとっていくので、いつか年代順に読んでその老いっぷりを楽しみたいと思ってはいるのですがなかなか。なお、『カリブ海の秘密』は後日談があるので、おなじくマープル物の『復讐の女神』よりは前に読んだほうが楽しめる。

ミス・マープルの長編初登場が1930年、最終作が1976年で、『カリブ海の秘密』は1964年なので、マープル物としては後半の方の話になります。ミス・マープルは前の冬にひどい肺炎をわずらいカリブに療養に来ており、ミス・マープルも年をとったなと(最初から年をとってましたがw)感じる本です。でもいわずもがな、頭の方はキレキレ。

とりあえずざっくりとあらすじ―

舞台はカリブ海の新しいリゾートホテル、そこに宿泊している話の長い退屈な退役軍人が、ミス・マープルに彼の持ちネタの中でも十八番の殺人の話をきかせる。「殺人犯のスナップ写真をごらんになりますか?」そう言って写真を取り出すが、ミス・マープルの背後を見たとたんに写真をしまってしまう。翌日に彼は死んだ。


  ※以下は、犯人や大きなネタバレは書きませんが、ちょっとのバレも気になる方は読まないほうがいいです。

ジョージアンホテル


彼の死は殺人ではないか?とにらんだミス・マープルは、捜査という名の噂話にせいを出します。こじんまりとした人のよさそうなおばあさんが、靴のヒールをもぎ取って裸足でバンガローに忍び寄る場面は、想像すると面白い。しかも満足げな顔をしてそうw この作品のミス・マープルは結構活動的です。その後もいくつか殺人事件が起こり、ミス・マープルはホテルの宿泊者である、大金持ちで人使いのあらく口の悪い寝たきり老人 ラフィール氏に強力を仰ぎ事件を解決。ちなみにラフィール氏はこの作品の後もう1回、彼がこのカリブの事件時ミス・マープルを評した言葉「復讐の女神」を題名に冠した作品に登場します。頑固で鋭い爺さんでなかなかいいキャラで、作者も気に入ったんでしょうかね。

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話としては、普通に面白い、程度かな。ラフィール氏は好きな人物ではあるのですが、すごく共感できる登場人物がいるわけでもなく、推理の筋も一部無理矢理感があったような。ホテルにいる人たちを容疑者にし、おしゃべりを通じて犯人を割り出すのは、以前感想を書いた『白昼の悪魔』に似ています。イギリスのデヴォンシャーのリゾートホテルを舞台にした『白昼の悪魔』に比べると、いまいちこの作品はいつものクリスティらしい中流階級ムードが足りない。イギリスではない国が舞台なのでしょうがないのか。 でも『ナイルに死す』なんかは、とっても西欧のお金持ちムードたっぷりだったのだけれど。船旅だったせいかな。『ナイルに死す』はとても好きなのですが、この作品はそういった理由でいまいちはまりませんでした。

この作品の魅力は、ミス・マープルとラフィール氏の老人同士のおしゃべりと、魅力的に老いるということ。とにかく老人パワーを楽しむ作品でした。





映像版 視聴感想

ミス・マープル カリブ海の秘密 VOL.5


製作:1989年
ミス・マープル:ジョーン・ヒクソン

イギリス版の映像を視聴。原作を読んだ時はモリーとラッキーが美人だと思っていたのですが、映像ではモリー・ケンドル以上にエスターが、想像よりもえらい美人さんでした。パルグレイヴ少佐は想像より元気な老人だった。ちなみにエスター・ウォルターズ役の女優さんはバーバラ・バーンズと言うらしい。

話はというと、う~ん…殺人事件が起きるというのに緊迫感も怖さもなく、全てがあっさり進んで行ってしまう感じ。そして何よりBGMが酷い。墓掘ってる場面で妙に陽気な音楽とか、モリーがしゃべりだす時によくかかっていたムーディーな曲は、場面に合わず前後の脈略を無視して流れるし、マープルがピンクの毛糸を巻いて犯人を捕まえに行く時の音楽も酷い。とにかくいろいろ酷いw スーシェ版のポアロの音楽が良いせいで、クリスティーシリーズはなんとなくBGMが良いように思ってたけど、間違ってたわ。

マープルが靴のヒールをもぎ取って裸足でバンガローに忍び寄る場面が無かったのが残念。そしてこの話の1番の見せ場、最後のネメシスの場面がとくに感慨なくあっさり終わった。いや、マープルだったら静かに落ち着いてああいうふうに言葉を発するのが合っているのかな。でももっと仁王立ちで大迫力のマープルを想像していたので残念だった。




映像版 視聴感想その2
製作:1983年
ミス・マープル:ヘレン・ヘイズ版

この話、特に好きというわけでもないのに、なんでこんな見てんだ…。

個人的に想像していたマープルとしての見た目はヘイズ版の方がヒクソンより近いです。ちょっと太っていますが。丸顔のやさしいおばあちゃんを想像していたので。もっともクリスティは年をとったらヒクソンに演じて欲しいと言っていたので、クリスティの考えていたマープルにはヒクソンの方が近いんでしょうね。でも話し方とか性格はヒクソン版の方がイメージに近い。ヘイズ版は元気でバサバサしすぎてるかな。


話としては私はこっちの方が好きかも。ヒクソン版はBGMが酷くて内容もなにも頭に入ってこなかったので。老人陣の活躍が際立っていた。その分夫婦たちの出番は少なかったけど。ちょとラフィール氏はお馬鹿っぽくなってたかな?そして残念ながら、バンガローに忍び寄る場面はありましたが(かわいかった)、ヒールをもぎ取って裸足ではなかった。そう言えばネメシスの言葉も無かった。いいのか?

一方で、映像や見た目はヒクソン版の方が全然よかった。昔の古い雰囲気に、女性人のおしゃれなドレス(これは明らかにヒクソン版の勝ち)、出演者の見た目、ホテルの内装等。こういうのもクリスティものの楽しみの一つなので、話とは関係ないけど重要なポイントではある。
 
       
 
         
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