旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【ドラマ】名探偵ポワロ『砂に書かれた三角形』 ―クリスティの旅行物は楽しい


『砂に書かれた三角形』

原作は『死人の鏡』収録の短編「砂にかかれた三角形」。今作はレギュラー陣は休暇でお留守、ポワロ一人ロードス島にバカンスです。しかしマンションのドアマンが住人の休暇まで把握しているとは驚き、しかも出かけ先まで。割と大きなマンションで結構な人数住んでそうだけど…。しかも郵便配達の人も住んでいる人を一人ひとり知っているし。それにしても留守だと郵便は配達してはいけないのでしょうか?イギリスの郵便事情は謎です。

そして秘書はきょうだいの所へ、…と言っていましたが、これは『ヒッコリー・ロードの殺人』に出てきたミス・レモンの姉、ハバード夫人のことでしょうか?それとも他に姉妹が?でもポアロに、「姉が(もっと言えば家族が)あろうとは想像できない」と原作ではすごいこと思われているミス・レモンに、もしさらにハバード夫人以外の姉妹がいたら驚きです。万が一にも大家族で育ったミス・レモンとか、完全に想像の範囲を超えていますw

あらすじ~
ポワロはイタリア(現ギリシャ)ロードス島に休暇を過ごしに訪れていたが、同ホテルではチャントリー夫妻、ゴールド夫妻の2組の夫婦が険悪な雰囲気になっていた。ポアロと親しくしていた宿泊客のパメラは、砂浜に三角形を描きバレンタイン・チャントリーを頂点とする三角関係を揶揄し人間観察を楽しんでいた。

ある日の食卓でゴールド夫妻と口論になったチャントリーは、ダグラス・ゴールドにワイフを奪えると思ったら大間違いだと怒鳴りつける。その後双方謝罪し和解したものの、その夜チャントリーのお酒を飲んだバレンタインが死亡する。


口論をする2組の夫婦の横で、平然とかつ真剣に内臓の串焼きをオーダーするポワロw

「炭火焼ですね?結構」

今回はポワロさんの休暇先の外国が舞台、海外旅行が趣味の身としてはこういうのはわくわくします。私は話の筋とは別に、アガサクリスティ作品の映像化では宿泊先のホテルや旅行グッズ、旅先での服装なんかを見るのがとても楽しみ。

今作も女性陣の服装がとっても素敵ですがしかし男性陣の水着はちょっと笑えますw

「砂にかかれた三角形」を元に書かれた長編に『白昼の悪魔』があり、それをポアロ役:ピーター・ユスチノフで映画化した『地中海殺人事件』という映画があるのですが、あちらも異国情緒あふれるホテルに、奇抜だけれど華やかなリゾートファッション、特に帽子の使い方にほれぼれするかなり目に楽しい作品になっています(話は普通ですが)。女優というものはこういうもんなんだよ!というのをバーンと見せてくれる、大好きな作品。

この原作(「砂にかかれた三角形」 or 『白昼の悪魔』)は映像映えするんですな。



 ⇒関連エントリー:【映画】『地中海殺人事件』(アガサ・クリスティ原作) ―女達の華麗なる戦いとケンタッキーポアロ

スーシェ版のこの作品も、お洒落さでは負けず女性陣は皆可愛い服装で。しかしハイキングでもスカートにヒールとかあの時代の淑女は大変ですね。でもパメラさんは赤が好きなのか、生成りの麻のスーツや白地のワンピースに、赤の差し色の小物の合わせ方とかすごくかわいかった。



ポワロさんが出国審査に引っかかったシーンは、てっきりこれは事件が起きたのでちょっとこちらへポワロさん助けてください展開かと思ったのですが、なんとスパイ容疑で取り調べをうけていたw しかしポワロはスパイにしては外見が目立ちすぎるような…。とても一般人とは思えない髭、ということでしょうか。

マージョリー・ゴールドがしゃべるたびにちらちらと誰かの顔が思い浮かぶと思っていったのですが、吹き替えがミス・マープルのドリー・バントリーをやった人(藤田 淑子)と同じでした。言われてみればドリーっぽい。朗らかなあっけらかんとしたしゃべり方が好みです。

 ⇒アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら

以下ネタばれあり ※ 『白昼の悪魔』に関しても若干ネタバレ気味です

ラスベガス


すっかり筋を忘れていて途中まで 『白昼の悪魔』と同じ犯人だと思って見ていたので、留置場のシーンであれっ?となって慌てて犯人を考えだし、犯行手順やら何やらお構いなしに真っ先に頭に浮かんだのが ”バレンタインが夫を殺そうとして間違って自分で飲んじゃった” というひどい説だったことから考えても、どう考えても私もパメラさんと同じように「派手で離婚歴の多い男好きの女性=男性を手玉にとる悪女」という刷り込みに毒されております。クリスティ作品でこの手の軽い感じの女性が犯人であることって少ない気もするのに。

原作だと、チャントリーの嫉妬の演技のほかに、”夫はこんなに私を甘やかしてくれる、男の人は皆私に優しい”、とことあるごとにバレンタインが見栄と自慢を挟むので、読んでいるとさらに上手いぐあいに誤った三角関係(バレンタインをとりあう夫とダグラス)へミスリードされます。しかしドラマでは割とそこらへんはトーンダウンしていて、ここがお気に入りだったので少し残念です。見栄と自慢が、夫と愛人による自分殺しの計画を後押しするような言動になってしまっており、自分で自分の首を絞めてしまった、という皮肉。



マージョリーも実は同じように、”私は夫に愛されている、私たちは幸せな夫婦”とわざわざ口に出していかにも愛されていない妻的な演技をしていて、マージョリーに対しては不幸な家庭生活を必死で打ち消す健気で可愛そうな鬱陶しい妻的な目で見ていたものの、言っている人が美人で派手なバレンタインとなると ”なんだこいつハイハイ自慢自慢"となってしまい。

原作を読んでいる時はこの辺の女性的な偏見を利用され、すっかり騙された感じです。原作で書かれている ”地味でまじめで人の同情を誘う女性の方が犯罪者タイプだ” という説もなんとなくわかるような気もします。このへんもっと映像で見たかったような。

ちなみに、原作を含む短編集『死人の鏡』についての感想は、こちらに書いています↓

【本】 『死人の鏡』(アガサ・クリスティ/ポアロ) ―珍しく気に入っている短編集 - エルキュール・ポアロ(ポワロ)

『死人の鏡』☆☆☆☆★短編(中編?)4つを収めた1937年発表の 『死人の鏡』。私は中編・短編はあまり好きではないのですが、この短編集 『死人の鏡』については「謎の盗難事件」を除きどれも好きです。他の短編よりも長さがあるからでしょうかね?このぐらいの長さがあると各登場人物の内面が掘り下げられていて、共感できたり読んだ後に考えさせられたりと、結構印象に残る話が多いです。特に気に入っているのは「厩舎街の殺人」で、...


原作と同じならバレンタイン39歳、マージョリー35歳、しかしこのドラマでのマージョリーはバレンタインよりもっと上に見える…。言動の鬱陶しさもあって、ドラマ版なら私が男だったら正直ねちねち暗いマージョリーより、おつむやらお尻やらがいろいろ軽くても明るいバレンタインを選ぶわ…と感じるのは、マージョリーとチャントリーの策略にすっかりのせられているというわけなんでしょうね。

そしてそれ以上にチャントリーの魅力がわからん…。嫉妬の演技をしているとは言え、失礼で粗野で特段顔も良くなく、そもそもこんな人がなんでバレンタインと結婚できたのかが謎だし、人殺してまで略奪したい男でもなし。と言ってしまえば話は終わってしまうので、深く考えないようにしよう。



今作では特に、十字架の前で十字を切る夫に、素通りの妻の演出が良いです。カトリックという単語を出さずに夫が敬虔なカトリックであることをにおわせるこのシーンは、ドラマオリジナルです。

原作だと、今作ではポアロは各人物の人間性を見抜き、偽の三角関係には惑わされず最初から犯人がわかっている、というミス・マープル的推理方法。そのため、手がかりがあまりなく正直読んでいて唐突な解決だったのですが、そこらへんドラマ版は補完されていてよかったです。


アガサ・クリスティ作品(名探偵ポワロ、ミス・マープル含む)感想一覧はこちら
『名探偵ポワロ』シーズン1

 
       
 
         
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