旅行鞄にクリスティ

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【ドラマ】名探偵ポワロ『死人の鏡』―「お前が殺したのです~」…違います


『死人の鏡』

ぬ~ん、なんか原作はお気に入りの話だったのに、ドラマはなんかなんじゃこりゃ~。火事も爆発もあるよ!の派手なアクションに加えて怪奇小説風味もたっぷり、その分時間なくなったんで人物像については省略しますね…、そんなアレンジ。

ルースが結婚していることを冒頭でばらしてるし、シェブニックスの秘書とかヴァンダの友人とかは登場せず。登場する人物も、その人となりを表すエピソードは結構削られています。


シェブニックスなんかは、原作では屋敷に列車すら止めさせる”我こそは全能の神”的な病気すれすれの変人っぷりでしたが、ドラマではだいぶマイルドになって普通の横柄な人程度に。絶対的な専制君主として君臨していたシェブニックスは、銅鑼の鳴った時に広間に集まっていない者は二度と屋敷に招かないほど食事の時間に厳格であった、という印象的なエピソードも省かれている。

なので私が密かに気に入っていた、”食事の銅鑼が鳴ったのにシェブニックスがいないなんて…!” というものすごくどうでもいいことで登場人物が呆然・恐慌状態になるという原作のオープニングも、ドラマではシェブニックス居なくても誰一人慌てていないw 性格悪いおっさんが一人死んだぞ、的な。

あらすじはNHKオンラインより
競売場で知り合った紳士。詐欺調査の依頼が、その後、殺人事件へ…。

競売でポワロが狙っていた鏡を高値で競り落としたシェブニックスという男性が、詐欺の調査を依頼してきた。彼の館には、風変わりな夫人と家族、そして詐欺の疑いをかけられている建築家がいた。夜、夕食の時間を知らせるドラの合図で一同がホールに集まるとシェブニックスの姿がない。彼は鍵のかかった書斎で頭をピストルで撃って死んでいた。遺書のメモも残され警察は自殺と断定するが、ポワロには気になる点が…。


アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒原作の感想はこちら:【本】 『死人の鏡』(アガサ・クリスティ/ポアロ) ―珍しく気に入っている短編集

以下ネタバレ有り

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原作では、周囲の人には誇大妄想っぷりを疎まれていたものの、これまた変人の妻とクールな養女はそんな彼を理解し愛情をもっており。ルス評によると、父親は心の奥にはうんと愛情を持っていたが、猿山のボスみたいに徹底した間抜けで自分が間抜けなのを自覚していてたからこそ威張り散らしていた、とのこと。

こういう威張り腐った暴君は、よく家族がその恐怖政治による一番の犠牲者として(『エッジウェア卿の死』等)描かれますが、今回に限っては家族だけが理解者。はたから見たら妙な形に見えても、家族にしかわからない絆がサラッと描かれているところも好きなポイントでした。


しかしドラマではまぁポワロに鏡をみせびらかしてはニヤニヤ笑うただの性悪じいさんに。ポワロさんはさんざん見せびらかされた挙句、報酬として支払われるはずだった鏡が割れちゃうという踏んだり蹴ったりの扱い。可愛そう…。このへんはドラマオリジナルです。ドラマスタッフはポワロに恨みでもあるのか。

でもスーシェポワロがムムムッと怒りを込めた上目遣いをするととても可愛らしいので、いじめたくなるのもわかるわ。

ジョン・レイクが詐欺の犯人というのは、「死人の鏡」ではなく「二度目のゴング」の方の設定を持ってきたようです。原作では、「死人の鏡」とよく似た話に「二度目のゴング」があり、どちらも同じ題材を扱った話ですが犯人・動機が異なっています。「死人の鏡」の方では、シェブニックスが手紙に書いた依頼事項も詐欺なのか横領なのかもよくわからず、結局うやむやのままサラっと流れています。

そうそう、原作ではポアロはシェブニックスに会えていません。手紙が来て、屋敷に行ったら死んでた、みたいな。なのでドラマみたいにいろいろ意地悪されたりはしていない。



ドラマはもう人物像にまつわるエピソードが結構削られていて特に好きな登場人物も共感できる人もいなくなった上に、やたら胡散臭い怪奇風味が付け加わっています。

原作では奥さん一人がイっちゃってるだけで周りは淡々としたもんでしたが、ドラマでは音楽もやたら煽る煽る。最初から結構不気味な雰囲気で変なおばさんが変な格好で変な事言っちゃってるけど、見るからに怪しいやつは雑魚であるというのがミステリーのお約束。

そんな感じでいまいちドラマにのれないながらも、いつものテーマ曲に替わって、あ~あああああ~の音楽がおどろおどろしく不気味さを煽る…ような気もしましたが、なんかどのシーンでもいっつもあ~あ~言われると、たまには他の言葉喋れよ、と。その上、最後犯人までダメ押しの悪乗り。

「サフランよ…ヴァンダ、下に~オリテ来ナサ~イ」



行きません。

いや、行くかもしれない、飛び蹴りしに。さすがに変声器使ってるわけでもなくあれだけ長々喋ってれば、知っている人の声ってのはわかるだろう。そんで「お前が殺したのです~」 …いや、違いますけど?もう速攻「お巡りさんこいつです」するよね。

そしておどろおどろしい声で渾身の演技している時に、パカッと扉開けられこんにちわ。鳩時計か。この一瞬は絶対、逮捕も罪も忘れてすごい恥ずかしかったはず。とんだギャグ回だわ、と思ったら最後絞首刑の縄がプラ~ン。

( ゚д゚ )


アガサ・クリスティ作品(名探偵ポワロ、ミス・マープル含む)感想一覧はこちら

『名探偵ポワロ』シーズン3



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