【ドラマ】名探偵ポワロ『ポワロのクリスマス』 ― 驚くほど似てい…え?
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『ポワロのクリスマス』クリスマスのヨーロッパ、ほっこりとした雪の田舎町、この話は原作もドラマも好きですね~。一度見るとしばらくはジャップ警部の親戚の美声が離れません。頭の周りで笑顔で輪になってエンドレスで歌われている気分。
第6シリーズに入ったせいか、なんかこれまでと映像の印象が違って、色褪せた感じになってるのかな?映像も建物もクラシックで見ているだけで楽しいです。田舎町が舞台のせいかミス・マープルが出てきそうな感じ。暖炉の横に座ってそう。
暖炉と言えば、ドラマではセントラルヒーティングにつられて仕事を引き受けていました。鼻歌歌っておいしそうな一人ディナーをご機嫌で用意してたのに、大事な大事なセントラルヒーティングが…!おーのー。あちらのクリスマスを暖房装置なしで過ごすのは辛そうです。あの後あのおいしそうなディナーは食べられたんでしょうか。しかし前作では競り負けた鏡につられて仕事を引き受けていたし、ポワロを操るのは結構ちょろいかもしれん。
あらすじはNKHオンラインより―
富豪の老人が息子たちの前で遺言書を書きかえると宣言。その後、老人は謎の死を遂げる。
ポワロはある老人から、「命の危険を感じるので、クリスマスの間、滞在して欲しい」という依頼を受ける。今は車いす生活を送る老人だが、かつて南アフリカでダイヤを掘り当て、一代で財を築いていた。屋敷には彼の息子たちや孫も集まり、一同を前に老人は遺言書を書きかえると宣言。息子たちは反発する。しばらくして老人の部屋からすさまじい物音が…。
クリスマスの風景に加え、今回は女性陣が目の保養です。どことなく安達祐実似のデコ出しリディアに、金・男大好きのお決まりの金髪美女マグダレーナ、歯に衣着せぬず欲望に素直なピラーと系統の様々な美女揃いで、個性あふれるキャラクターも楽しく。なお原作ではもう一人、ヒルダというしっかりものの女性が登場。
⇒アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
⇒原作の感想はこちら:【本】『ポアロのクリスマス』―クリスマス終了のお知らせ、なお話(アガサ・クリスティ著)
以下ネタバレ有り

シメオン・リーの妻と三男デイビット、その妻のヒルダの話は印象深いので、ごっそり無くなってしまったのは少し残念です。
シメオン・リーの妻は、従順と言えば聞こえはいいですが夫の浮気に嘆くばかりで離婚もせず、不満だけはじっとりと顔に出しながら自らは何も行動せず。望むものは自らの手で切り開き奪ってきた道徳観の薄いガキ大将的な性格のシメオンリーにとってそういう妻は耐え難く、余計にイライラと横暴さを増幅させる結果に。
諸々の元凶はもちろんシメオンであり妻は横暴な夫の被害者ではあったものの、単純な被害者ではなく夫の邪悪な部分を引き出していた大きな原因の一つでもあり、さらにはまだ幼い息子に夫がいかに酷いか、従順な母を痛めつける悪魔のような父親像を繰り返し吹き込み続け人格形成に大きな影響を与えた結果、息子は酷いマザコンに。
彼は父親像におびえ、母が亡くなった後は家を飛び出したものの、結婚後は妻に母親像を重ねて母性を要求。そんな弱く優しいデイビットと結婚してしまった堅実でしっかりものヒルダは、登場人物の中では一番まともでしたが、夫に対し妻でありたいと思う時も母親でいなればならず、結婚生活は幸せではなかった。
これだけで一つの別の話になりそうなぐらいの濃さがありますが、それゆえにドラマでは削られてしまったんでしょうかね。ここら辺はぜひ原作を読んでください。
親の世代から子の世代へ受け継がれていくひずみの連鎖はこの話の一つのテーマでもあります。このへんの設定の一部が、ドラマではサグテン警部に引き継がれているようです。
原作ではシメオン・リーの忍耐強い復讐心が子供にも遺伝していましたが、このへんは犯人の母親がとってかわり、痣の女性:ステラをオリジナルで登場させています。父親の気質と、母親から父親への悪口を吹き込まれ続けた結果、息子はマザコンではなく復讐心をつのらせた殺人者に。なんとも酷い話です。
シメオン・リーは確かに酷い人間で、ステラにはダイヤに目もくれずに助けてあげた人物から金を盗まれるというそれなりに同情する部分もありましたが、人殺しとなって警察に捕まり絞首刑になろうとしている息子に向かって「やり遂げたわ」と誇らしげに言った時にはわずかな同情心も消え去りましたね。そこまで復讐が大事か。
登場人物は、先のデイビットに加えて、もう一人の隠れ異母兄弟スティーブンも省かれています。冒頭でピラールと一緒に列車で訪ねてくるのがスティーブン(シメオンの友人の息子と身分を偽って)。そして最後ピラールを射止めるのもスティーブン。最後の登場人物全員を集めた種明かし場面で、こんなところにやっぱり異母兄弟がいたのか!怪しいやつめ!と思ったらなんとさらに警察までが異母兄弟、警察が犯人だったよという話。シメオン、種まき過ぎ芽が出過ぎ。そりゃ老トレッシリアンも混乱するわ。
しかしドラマではスティーブンが消えたのでハリーは役得ですね。あんなしおれた豆みたいなおじさんが、ピラーみたいなピチピチの娘を連れ去るなんて…。
なお、ドラマではあまり詳しく説明されていませんでしたが原作では、サグテン警部は最初家に来た時にダイヤが何者かによってすり替えられていると嘘をつき、確認のためにシメオン・リーに金庫を開けさせてから殺してます。だから金庫からダイヤが取り出せ、ダイヤ泥棒による強盗殺人に見せかけることができている。
犯行方法は、クリスティにしては珍しく手が込んでいるというかなんというか。家具やモノを積み上げている時に、ふと触って倒してしまったらどうしよう、紐を引き去るときに風船部分が落ちて積み重なった家具に引っかかって抜けなかったら…?とかいろいろ想像してしまいドキドキしてしまうので、私は絶対あの方法ではできないわ。本で読んだ時はそんなもんかと思ったけど、映像で見るとなんか無理ゲー。
話を知っていてドラマを見ると、最初の登場とかピラーの尋問の場面時にあまりにわざとらしくサグテン警部が入ってたり、その後のピラーの「彼みたいに」とか執事の証言とかでいかにもヒントっぽい感じでサグテン警部の名前がでてきたりと、これは結構犯人わかりやすかったんじゃないかと心配になるのですが、初見の人はどうだったんでしょうね?私は原作初読時はまさか警察が犯人なんて!とすごく驚いた記憶があるので、まるっと騙されてこの驚きをぜひ味わって欲しいな~。何はともあれ、クリスティのクリスマス物に外れ無しの面白さでした。
来週はヒッコリー・ロードの殺人です。


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