旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【映画】ガニ股で突進するミス・マープル ― 『夜行特急の殺人』(パディントン発4時50分、アガサ・クリスティ原作)



『夜行特急の殺人』 (=パディントン発4時50分) 

これは…w '61年のモノクロ映画、原作はアガサ・クリスティの『パディントン発4時50分』でかなり好きな本だけれども、ちょっとこれはw 何とも言えない、すさまじいマープルです。

麗しきスーパー家政婦、我等がルーシー・アイレスバロウは出てきません。ルーシーがいないので、兄弟たちとのロマンスもなし(と思ったらかわりにアレか?)。ルーシーの替わりにミス・マープル自らがお屋敷に乗り込んで行きます。なんとメイドとして。ずいぶんお年を召したメイドだな…。

この作品の見所は、このマーガレット・ラザフォード演じるミス・マープルに尽きるでしょう。不審者に花瓶を投げつけ、ゴルフクラブを振り上げる。すべての動作が無駄に力強く、ナフキンも枕も投げてよこす。がに股でドタドタ、というかドスドスと足音をたてて歩くその姿は野獣のよう。ガタイが良すぎて、角度によっちゃ女装したおっさんに見える厳つさ。推理力というよりフテブテしさで全て乗り切る。コントのようです。しこを踏むようにマフラーを巻く姿の勇ましさよ…。



製作者はなんでこんなマープルを思いついた?原作のマープルらしさの名残は好奇心のみ。淑女の面影無し。いや酷い。酷いけど面白かった!

 ⇒原作『パディントン発4時50分』読書感想はこちら参照
 ⇒ヒクソン版『パディントン発4時50分』視聴感想はこちら
 ⇒アガサ・クリスティ 作品・感想一覧はこちら

電車に乗っていたマープルは、同じ方向に平行して接近する電車の窓の向こうで女性が首を絞められて殺害されるのを目撃する。すぐ車掌に知らせたが、死体はどこにも発見されなかった。年寄りの見間違いと処理され怒り心頭のマープル、電車から捨てられたと仮定し、自ら捜査に乗り出す。

紅茶


荒れ狂うマープルとは対照的に、エマはとても美人で清涼剤のよう。髪型はおばさん臭いけれど。ジェイムズ・ストッダード=ウエストは出てこないので、子ども2人の小憎たらしい掛け合いは見られませんが、アレクサンダーは原作以上に頭がよさそうな行儀のいいいたずらっ子で、マープルといいコンビでした。子どもでもしっかりレディファースト。

そしてなんとキダー夫人を後のミス・マープルで有名なジョーン・ヒクソンが演じています。マープル達の共演。



楽しみだったルーシーやルーシーの作るご馳走が出てこないのが残念です、そして好きな原作とはかなり違ったものになっています。これはミス・マープルではない。断じてない、が…いや~これはこれで面白かった。あまりにイメージと違うマープルに拒否反応を起こして見る気をなくしてしまった人も、謎のハートウォーミングでハートフルな爽快感があるのでw、ぜひ一度見てみて欲しいわ。

言っておきますけどね、変な老人だと決め付けられて、おとなしく我慢していると思ったら大間違いですよ。―ジェーン・マープル

 
       
 
         
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