旅行鞄にクリスティ

日々のあれこれを忘れ、手の届く贅沢で自分を甘やかし明日への活力を養うブログです。バッグにアガサ・クリスティを詰めて行く海外旅行が最大のご褒美。


【本】恐るべき老女探偵の初登場―『ミス・マープルと13の謎(=火曜クラブ)』(アガサ・クリスティ著)


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『ミス・マープルと13の謎』(ハヤカワ文庫では『火曜クラブ』)☆☆☆★★

アガサ・クリスティの生み出した、ポアロと並ぶ人気探偵ミス・マープルの初登場作が収められた本。ただし『スケッチ誌』に連載されていたので、短編集として出版されたのは『牧師館の殺人』より後になります。私は基本的にクリスティはハヤカワ文庫で読んでいるのですが、初期の頃に買った作品はいろんな出版社のが混ざっています。これもその一つ。

最初に著者の言葉がついています。著者の祖母に似ているというミス・マープル、著者自身ポアロよりミス・マープルの方が好きといっていますが、たしかに作品をみていくと、晩年の作品でもあまり老いていないし(元から老いているというのはおいておいて)、××しないし、作品数は少ないですがポアロより作者に気に入られていい待遇をうけているような気がします。著者曰くミス・マープルの良さを生かすのは短編、ということで、この本は13の短い謎をミス・マープルが解きます。


ミス・マープルとは―
セント・メアリー・ミードというイギリスの平和な片田舎にずっと住んでいる、世間の事なんか何も知らなそうな時代遅れの穏やかで上品なおばあさん、と世間からは(主に若者からは)軽んじられる。が、実際は村は人間関係の凝縮された場所であり、「ずっと一所で暮らすと人間を深く観察できる。人間なんてみな似たり寄ったりでおめでたい」との持論で数々の事件・犯罪を村の人間関係に当てはめながら、その人畜無害の存在感と噂話を武器に正解を導く名探偵。暖炉の前で編み物をし、「常に最悪を想定」し何事にも動じず、正しいと信じる行いを粛々と行う、ビクトリア朝時代の遺物のような人物である。

ポアロは、時に自分が外国人ということを誇張し容疑者たちを油断させ会話を引き出しますが、ミス・マープルは穏やかな老女という見た目で油断させる。毒にも薬にもならない存在としてはなから人に警戒されないので、これは彼女の大きな武器です。

この本は、出席者が1つずつ謎を話し他の出席者が解くという、ミス・マープルの家で行われた火曜クラブの短編が6つ、翌年舞台を同セント・メアリー・ミードに住むバントリー夫人の家に移し、出席者を少し変えて再度同じように行われた謎解きが6つ、最後に、両方の舞台で登場しているロンドン警視庁前警視総監ヘンリー・クリザリング卿が、ミス・マープルに導かれて現在進行形の事件をとく1編で構成されている。個人的には長編の方が好きですが、短編は推理がしやすそうでやってみようと思わせるので(当たらないけど)、それはそれで面白いです。


ミス・マープルには、甥のレイモンドがつき物ですが、ミス・マープルの話の中だけでなく実際に登場するのは珍しい。自分は世間を知っている、今は自分たちの時代であるという若者特有の自信に満ち溢れた、心優しいお目出度いレイモンド。そんなレイモンドに言ったミス・マープルの「おまえはすぐ人を信用するからだまされやすいんですよ、レイモンド」は名言。本作中は名言がたくさんある。ミス・マープルの「だれもかも、本当は人間なんて似たりよったりなのよ。ただね、幸いなことにはそれに気がつかないだけなんです」や、お馬鹿女優ジェーン・ヘリアの言った「あたくしだって村にすんでいたら、まるでおばかさんになってしまうでしょうねぇ」も結構気に入っているw それはさておき、レイモンドは特別お人よしというわけでもなく、私たち一般人の代表でミス・マープルに小言を言われています。ミス・マープルシリーズは、おばあちゃんから私たちへの小言シリーズでもあります。でも意地悪ではなく人間への愛があるお小言。

 ⇒アガサ・クリスティ作品感想一覧はこちら
 ⇒ドラマ版の視聴感想はこちら ミス・マープル『青いゼラニウム』 ―村人は皆悪を隠し持っている 参照


※以下ネタバレあり。他のクリスティ作品の犯行の核心部分にも触れているので注意

シャンティイ


13篇の中では、どちらかというと後半のバントリー夫人の家で語られた謎が好きです。緊張感のある『四人の容疑者』、さすがはミス・マープルといった『クリスマスの悲劇』に犯人におどろいた『死の草』。どれも著者自身気に入ったのか、後にこれを題材にしたのか似たような話の長編を書いています。クリスティは以前書いた短編を膨らませて長編へというのを結構やるのですが、どれがどれだかわからなくなるので、自分のためのちょっとメモ書きで〆。

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『クリスマスの悲劇』⇒『白昼の悪魔
 偽の死体を見つけさせた後に実際に殺す。帽子で隠す。
『舗道の血痕』⇒『白昼の悪魔
 夫婦共謀の体力派殺人。連続犯。
『死の草』⇒『スリーピング・マーダー
 動機が似ている。庇護すべき年の離れた身内にゆがんだ愛情を向け、自分から離れそうになると殺す。
『四人の容疑者』⇒『無実はさいなむ



by カエレバ


 
       
 
         
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